子ども13人が懸命演技 初書き下ろし「はるぬ七ち星」 沖縄芝居研究会


社会
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北斗七星を見上げて両親のマツガニ(右から4人目)とカナガマ(右端)への孝行を誓う子どもたち=7日、那覇市のパレット市民劇場

 沖縄芝居研究会(伊良波さゆき代表)が那覇市のパレット市民劇場で7日、研究会初の書き下ろし作品「舞踊劇 はるぬ七ち星(ななちぶし)」(伊良波、米盛未来、伊波留依脚本・演出、金城真次、上原崇弘振付)を開催した。ほか舞踊2題と喜歌劇「馬山川」を演じた。「はるぬ―」は、宮古に伝わる民話を元に、金持ちだが子どものいない西銘ぬ主夫婦と、貧乏だが子宝に恵まれたマツガニ一家を描く。4歳から14歳まで13人の子どもたちが、人のぬくもりを描いた物語を懸命に演じ、観客の心をほっこりさせた。かりゆし芸能公演の一つ。

沖縄芝居研究会の会員による喜歌劇「馬山川」

 幕が上がり静かな笛の音が流れる中、舞台には丸い五つの影が並んだ。太鼓の打音に続き、「かぬしゃがま」の歌三線が始まると明かりに照らされて、マツガニ家の5人の子どもたちが踊りだした。頰に手を当てるなどかわいらしい所作に、観客は目を細め、手を打った。丁寧なマツガニと妻カナガマの踊りも、子のいじらしさを引き立てた。

 西銘ぬ主夫婦の家の場面では、下男4人がはつらつとした踊りを披露した。優しい西銘ぬ主夫婦は、家をのぞいていたマツガニ家の子に、おにぎりを分けてあげる。おにぎりとお土産を手に、家に帰った子どもたちは、ひしゃくの形をした七ち星(北斗七星)を見上げ、両親に「大人になったら、あのひしゃくで楽の玉水をくんであげる」と言う。物語の端々に、子のけなげな優しさと、周囲の人々の温かさを詰め込み、晴れやかな終幕へと観客を誘った。

フィナーレで懸命な踊りを見せる出演者

 沖縄芝居は一枚幕を前に演じられるものが多いが、複数のかきわりを用いた。かきわりの間から、子どもが顔をのぞかす姿がかわいらしいだけでなく、舞台の出入りの時間短縮にもつなげており、演出のうまさが光った。

 また、地謡は高い力量で、子役の演技に観客を集中させた。緊張した表情の子もいたが、無邪気一辺倒ではない初々しさが観客の胸を打ち、冒頭から最後まで手拍子がやまなかった。

 伊良波代表は「こういう状況だが、拍手を子どもたちに味わってほしいと思い開催した。子どもたちの頑張りが伝わったのか予想以上の拍手を頂き、やってよかったと感じた。舞台から何かを感じ、琉球芸能を本格的にやりたいと思ってくれる子が生まれてくれたら、公演にも意味があったと思う」と話した。

 喜歌劇「馬山川」は、沖縄芝居研究会の会員8人が出演した。ぼさぼさの髪とにやけた顔をした金城と、ちょびひげに垂れ目の扮装(ふんそう)をした上原は、共に十分な醜男(しこお)役を果たし、舞台に上がるや否や観客を笑わせた。醜女役の留依はときに舞台を跳ね、知念と共に劇を盛り上げた。大人が十分に客席を温め、子どもたちによる舞踊劇につなげた。
 (藤村謙吾)