〈75〉心臓手術コーディネーター 部署の壁越え寄り添う


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 医師から「あなたの心臓は手術が必要である」と言われた、と想像してみてください。心臓手術はその性質上、どうしても命に関わる場合がありますから、当然少なからず不安を感じることでしょう。相談できる人が近くにいなければ、インターネットで検索するかもしれませんね。

 勇気をふり絞って心臓外科の外来を受診し、いくつかの検査が済めば、手術の日程が決まるでしょう。いよいよ入院当日、緊張しながら指定された病棟を訪れると、看護師から病棟生活について案内を受けます。病室に落ち着いたのもつかの間、手術室や集中治療室の看護師、麻酔科医、理学療法士、薬剤師、さらには栄養士などの次々とやって来る担当者から、病気のことや施設の決まりごとといった、たくさんの説明を受けることになります。手術前の不安の中、完全に理解することが難しい場合だってあるでしょう。複数のスタッフに何度も同じ質問をされてうんざりしてしまう、などということもあるようです。

 通常、心臓外科が設けられているのは比較的大きな病院です。多くの部署が関わる心臓手術だからこそ、ある程度やむを得ない事情はあります。とはいえ、こうした状況を改善し、少しでも快適に治療を受けていただく方法はないものでしょうか。

 その答えのひとつとして、「心臓手術コーディネーター」を導入する病院が近年増えつつあります。施設によって役割に多少の差はありますが、最初の問い合わせ対応に始まり、外来から入院、そして退院後まで、登山のガイドさんの如く部署の壁を越えて患者さんに寄り添う役割です。医師には言いにくいようなことを気軽に聞いてもらえたら、精神的支柱として、傍らで励まし続けてもらえたのなら、不安でいっぱいの患者さんはとても勇気づけられるに違いありません。

 この先、多くの病院がこうしたスタッフを採り入れ、心臓を病む患者さんたちに安心して手術を受けてもらえるよう、一介の心臓外科医として強く願うのです。

(平沼進、大浜第一病院・心臓血管外科)