新型コロナウイルスまん延の影響で結婚披露宴の自粛が続く中、沖縄テレビの番組「ハイサイ新婚さん」(毎週日曜午前9時55分)が放送を継続している。何百人も招待し、余興有り、飲食有りの大宴会となる沖縄独特の披露宴は、コロナ下で真っ先に自粛された。番組存続も危ぶまれたが、制作会社は過去に取り上げた「新婚さん」のその後をインタビューする形式で放送を続行。苦肉の策だが、山あり谷ありの人生模様が浮かび上がり、新たな魅力を生み出している。
番組は1990年ごろに開始。親子2代の出演者がいるほどの長寿番組だ。「今週の幸せカップルは~」で始まり、リポーターが披露宴中の新婚さんに話を聞くのが定番のパターン。新婦のドレスや余興のトレンドを知る情報源としても県民に親しまれていた。
19年間リポーターを務める玉城愛さん(46)は「披露宴の日に新婚さんと初めて会う。打ち合わせは5分程度で、生放送のような取材」と裏側を明かす。番組のBGMを流しながらの取材は、余興の一部にもなっていた。
ところが、県内で新型コロナウイルスの感染が拡大し、披露宴の開催がぱたりと止まった。制作会社VIVA RYUKYU(ビバ琉球)の土肥仁社長(53)は「やめると番組がなくなると思った。暗い世の中で明るいことを一つでも提供したかった」と、過去の「新婚さん」を取り上げる形での継続を決めた。
番組内容を変えたのは昨年5月。2、3年ぶりの元「新婚さん」もいれば、十数年ぶりの元「新婚さん」も出演した。
今月8日に取材した金城睦荘さん(45)、宏枝さん(45)一家は約14年ぶりの出演。披露宴時お腹にいた長女は13歳になり、長男、次女、次男も誕生していた。インタビュアーの安田美琴さん(54)が「14年を一言で言うと?」と質問すると、睦荘さんは「幸せでしたね」という言葉と共に、笑顔のまま涙をこぼした。「泣いている」と笑いながら指摘する宏枝さんの目もうるんでいた。
夫婦の「その後」に触れる安田さんは「お互い尊敬し合える夫婦が長続きしている。日曜の朝に『ほっこり』できる番組にしたい」と、新たな形に手応えを得る。ただ、式場の廃業も出ており「お世話になった式場がなくなり、心に穴が開いたような気持ち。夫婦にとっても思い出の場所がなくなったことになる」と、さみしさも内に秘める。
出演が中断しているリポーターの玉城さんは「夫婦のその後を取材することで番組に深みが出ている。今は一人のファン」と番組を応援する。「披露宴はいろんな人に感謝を伝えられる節目。前みたいに2人の節目を盛り上げるお手伝いができれば」とコロナ収束を願った。 (稲福政俊)