第32軍壕の保存・公開、未発掘の第1坑道調査が焦点に 県へ不満や苦言相次ぐ


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 首里城地下の日本軍第32軍司令部壕の保存・公開を巡り、未発掘の第1坑道などの調査が焦点となっている。7月20日に開かれた、3回目の県の検討委員会で、県は年度内に基礎調査を実施し、次年度に未発掘区間の位置特定へ向けた詳細調査を実施する方針を示した。これに対し委員からは、調査の優先順位の付け方や、未発掘区間を含めた壕の全容解明に目標設定がないことなど、県の姿勢や進め方に不満や苦言が相次いでいる。

県の第32軍司令部壕保存・公開検討委員会=7月20日、那覇市の自治研修所

 未発掘区間

 県は7月20日の第32軍壕保存・公開検討委員会で、今後の地質などの調査スケジュール案を示した。案によると、本年度に基礎調査を実施し、今後の調査計画に必要な基礎図面を作成する。次年度の詳細調査では、未発掘区間を特定するため地上から電気探査などを実施するほか、地下水の調査を実施するという。

 委員からは「未発掘の場所を知るための優先順位が記されていない」(吉浜忍元沖縄国際大教授)など県の優先順位の付け方や、目標と過程の行程を示さない進め方について、苦言や疑問の声が相次いだ。

 県、優先は「4項目」

 県は委員会で、調査場所の優先度を決める「四つの観点」を提示。「立地・周辺環境」「安全性」「発信効果」「費用など」の「四つの項目を満たしている場所から調査・整備を優先して実施する」との方針だ。

 県は発掘済みの第2・3坑道、第5坑道と未発掘の第1坑道、それぞれの4項目の状況を説明。第1坑道は「あらゆる調査費用がかかり」「地上部に文化財があるため関係機関との調整必要」で、安全性は「未試掘のため詳細不明」とした。第1坑道は4項目のうち、少なくとも三つでマイナス点を示した形だ。

 県担当者は本紙の取材に「4項目を全て示す場所はないが、少しでも満たす場所から調査する。第1坑道を調査しないと決めた訳ではない」と説明する。

 県の検討委員会の次回会合では、未発掘区間を含めた詳細調査について専門家から意見を聞く予定だ。これまでの専門家の意見を受け止め、県からどのような調査方針が示されるかが注目される。
 (中村万里子)