【記者解説】沖縄新振興法、国の債務に触れず 中身は県との交渉次第


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 首相の諮問機関である沖縄振興審議会が、2019年6月から続けた議論の結果を最終報告にまとめた。最終報告には、焦点となっていた現行の「沖縄振興特別措置法」に代わる新たな法制度制定が初めて明記された。一方で、これまでの沖縄振興の位置付けで明記してきた「国の責務」には触れなかった。

 沖縄が来年で日本復帰から半世紀を迎えるのを前に、最終報告は、復帰から50年にわたる振興計画について「本土との格差是正」を目指した30年、「民間主導の自立型経済の構築」を指向した20年と大別した。沖縄振興の主役を「官」から「民」へ移行させた上での「自立型経済の発展」を目指す方向性は変わらないが、次の振興策のテーマには「持続可能性のある強くしなやかな」という表現を加えた。

 コロナ禍で問題が顕在化した県内産業の基盤強化と共に、「子どもの貧困」など解消されていない課題への危機感も表れている。

 一方、沖縄振興一括交付金の存続については明記せず、「国の支援措置を有効かつ適切に活用」との表現にとどめた。県や自治体の主体的な判断も求め、「エビデンスに基づく施策の展開・検証」の必要性も強調した。

 新法制定に向けた「一歩」との評価はできるが、その中身は県と国との今後の交渉次第となる。県が、従来のような主体的役割を維持できるかはなお不透明だ。
 (安里洋輔)