〈76〉コロナ禍の音声障害 音読や歌で「声筋トレ」を


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 新型コロナウイルス感染は医療、経済、社会にさまざまな影響を及ぼしています。観光、飲食業界の影響はもちろん、音楽や芸術などのエンタメ業界もかなりの打撃を受けています。

 コロナ禍において声の異常を訴える音声障害の患者さんが減少しました。この原因の一つとして、新型コロナ感染対策のためのエンタメ業界の自粛により、声を使うような職業である歌手などが活躍する場がなくなったこと、声を使うサークルや習い事などがしにくくなったことなど、声を酷使する必要がなくなり、声が悪化することもなくなったことが挙げられます。

 病気の方が少なくなることは良いことではありますが、自分で歌ったり、生の歌声を聞けなくなったりすることは非常に寂しいことではあります。子どもたちも学校の音楽の授業時間に歌うことを許されず、楽器の演奏のみを行っているところもあるようです。

 沖縄県は昔から古典音楽や民謡、ロックなど音楽とともに歩んできた歴史があります。新型コロナ感染症が落ち着いて一日も早くこれらのエンタメ業界がコロナ前のように再開されることを願っています。

 さて、ここまでは音声障害は減ったというお話をしましたが、実はコロナが長期化して逆に増えている音声障害もあります。これまで他者との会話が多かった方が、家にこもってあまり誰とも話さなくなった、趣味で行っていた歌を歌わなくなった、などが原因で起こります。

 声をあまり使わなくなったことで、いざ声を出そうとすると声が出にくい、といった症状を訴えます。その際に声帯をのぞいてみると、声帯の筋肉が痩せて声を出すときに声帯のしまりが悪いという状態になっています。これは歩かないと足の筋力が落ちて歩けなくなるのと一緒で、声帯も筋肉でできていますので、声を出していないと筋肉が落ちて声が出にくくなります。

 ですから、思い当たる方はぜひ、他の人に飛沫(ひまつ)が飛ばないように気をつけながら、新聞を音読することやCDなどの音楽に合わせて歌を歌うことなどを積極的に行うように心掛けてください。

(喜友名朝則、琉球大学病院・耳鼻咽喉科)