沖縄県が航空会社の貨物コンテナスペースを借り上げ、全国特産品などを那覇空港から輸出する事業者に安価で提供してきた「航空コンテナスペース確保事業」について、県は財政上の理由から事業を8月から停止している。新型コロナウイルスの影響で那覇空港発着の国際直航便が全て運休となった2020年4月以降も、県は暫定措置として東京を経由する輸出便でコンテナ借り上げを続けていた。だが、コロナの影響が長期化し、国際直航便も早期再開が見通せない中で、事業の一時停止を余儀なくされた。
県は那覇空港を拠点とした国際貨物ハブ機能を生かし、農林水産物など日本各地の特産品を沖縄経由でアジア各地に輸出するモデルを描いてきた。県がコンテナを借り上げることで輸送費を支援する同事業を16年度から実施し、那覇空港発の貨物量を増やすことに取り組んできた。
同事業による初年度の取り扱い貨物量は約509トンで、このうち県産品が約8割の407トンを占め、全国特産品が約2割の102トンだった。17年度は全国特産品の取扱量が前年度比約3倍の366トンに伸長し、18年度は全国特産品の取扱量が県産品を上回った。19年度は全体として最多の1423トンを記録し、全国特産品が945トンを占めた。
同事業は原則として沖縄発着の国際航空便に適用する。しかし、20年度は新型コロナの影響で沖縄発着の国際線が全て運休となった。県は緊急措置として、那覇空港から本土の空港を経由して海外に運ぶ貨物に対して、コンテナ借り上げによる輸出支援を継続した。このため20年度も1055トンの利用実績があり、このうち県産品以外の全国特産品は前年度比約37%減の596トンだった。
沖縄を経由する必要性がなくなった全国特産品にも輸送費軽減の恩恵が続いていた形だが、県商工労働部の担当は「同事業の利用は、全国特産品だけでなく県産品の輸出も含まれるため、昨年4月以降も事業を継続した。事業を停止すると、県産品の輸出にも影響する」と説明した。
「暫定措置」で事業を継続したのは、那覇空港の国際線が再開した際に円滑に事業が適用できるようにする狙いもあったという。国際直航便の再開に向けて、県が航空会社に働きかけるなどして、昨年12月~今年3月まで台湾の中華航空が旅客機で貨物専用便の運航を再開した。だが、運航コストなどの経営判断を踏まえ、同社は3月中旬から再び運休に入った。
同担当は「コロナ感染の拡大で当面、海外路線の再開が見通せない。直航便の利用ができないので、事業目的に沿った形でもないため、事業が一時停止となった」と説明。その上で「今後、事業者らと意見交換をしながら、国際線の早期復活にも努めていきたい」と述べた。
(呉俐君)