【名護】幼い頃から慣れ親しんだマリンスポーツが人命救助に生かされた。名護市東江の専門学生、渡具知仁来(にらい)さん(19)は7月25日、名護湾の沖合に流された中高生の兄弟2人を救助した。渡具知さんは「流された人たちが助かっただけでうれしい」と笑顔を見せた。
渡具知さんに8月27日、渡具知武豊名護市長から感謝状が贈られた。名護市役所で贈呈式が開かれた。
幼少期から父親とカヤックやSUPなどマリンスポーツに親しんできたという渡具知さん。台風6号が過ぎ去った後の7月25日午後4時ごろ、名護湾を臨む市東江の自宅前で掃除をしていたとき、数人が沖合に流されているのに気付いた。父親に指示されカヤックで救助に向かおうとしたところ、流された中高生の友人らも駆け寄ってきて「助けてほしい」と求めた。
カヤックにライフジャケットとロープを積み、海岸から約150メートル離れた海上まで渡具知さんがたどり着くと、必死に漁具の浮きにつかまっている兄弟が見えた。一人は話せる状態だったが、一人は泳ぎ疲れたのか衰弱している様子だったという。
名護市消防本部によると、この日は中高生ら15人ほどが市東江の海で遊泳していた。そのうち、最初に1人が流され、3人が救助に向かったが全員が流された。離岸流の影響で岸に戻れなくなった可能性があるという。4人のうち、渡具知さんが岸から最も遠くまで流された2人を救助し、1人は名護市消防署水難救助隊が救助。残る1人は自力で岸に上がり、全員無事だった。
渡具知市長は「渡具知さんの適切な行動で命が救われた。大変ありがたい」と語った。
現在、琉球リハビリテーション学院(金武町)2年で、柔道整復師を目指して勉強に励んでいる渡具知さん。「ライフジャケットやカヤックがあるので怖くなかった。台風の後も波は高いので、遊泳はやめた方がいいと思う」と話した。