【中部】新型コロナウイルス感染拡大が収まらず、8月23日で緊急事態宣言が発令されて3カ月となった。感染拡大防止では、県の時短営業・休業要請に応じた飲食店へ協力金が支払われる。沖縄本島中部のある飲食店街では、営業実態がないにもかかわらず、時短要請に応じたと装う店を本紙記者が確認した。一方、要請に応じず営業を続ける店もある。県の要請に応じて休業を続ける店は「正直者がばかを見ている」と不満を漏らした。
変わる張り紙
時短要請が出ていた2月、ある店の出入り口には「県の時短要請に従い、20時までに閉店します」と手書きの張り紙があった。張り紙の内容からは午後8時前の営業はあるように受け止められる。しかし、2~3月、本紙記者は実際に営業そのものがないことを確認している。
再び時短が要請された「まん延防止等重点措置」期間の4~5月、店舗の張り紙は新たな時短に応じていることを知らせる文面に変わったが、同じく営業実態はなかった。
県が公表している協力金の3期分(昨年末~2月)の受給一覧には、この店舗名がある。休業要請が加わる緊急事態宣言の5~6月は「休業致します」の張り紙に変わった。宣言が続く9月2日時点でも、休業中としている。
7月に電話取材に応じた女性経営者は「(国や県から)営業するなと言われ閉めている。(協力金は)正式な手続きで、法にも何にも違反していない」と答えた。
コロナ出るまで営業
ウンケー(旧盆入り)の8月20日夜。すでに時短要請の午後8時をすぎ、9時を回っていた。酒屋の男性従業員(36)がキャバクラなどの店が入るビルに泡盛の瓶などを運んでいた。
「コロナの影響で売り上げが4分の1に減った。卸さないと酒屋はつぶれる」
男性はため息を漏らす一方、取引先の飲食店が一日4万円の協力金目当てに浮かれているとも感じるという。「自分たち卸売業者への手当はないのに、こんなのはおかしい」。そう語り次の配達先に向かった。
午後10時を過ぎてもビルの客足は途絶えなかった。主に地元客が多いという。
30歳と29歳の男性2人が談笑していた。キャバクラを共同経営しているといい、見回りの県職員からは、次営業していたら店名を公表すると注意されたこともあるという。2人は取材に「20人いる従業員の雇用が大事。女の子はうちで働けなければ別の店に行き連絡もつかなくなる」と語った。コロナ感染が出るか、県から再び注意を受けるまでは営業を続けるつもりだ。
注意しづらい環境
この飲食店街の大半の店舗は扉を閉ざしている。コロナ禍で休業を続ける飲食店経営者は「開いている店に客が殺到している。要請に応じてきた店舗の不満は相当高まっている」と不公平感を口にした。
県の要請に応じない店の情報について、県などの関係機関へ提供しているが、事態は変わらないという。同経営者は「互いに顔も知っていて注意をしづらい。県や行政がしっかり対応してほしい。ルールを守らなかった店へ行かないような仕組みも整えてほしい」と求めた。
協力金を担当する県中小企業支援課には昨年末からこれまでに、「店を開けているのに協力金を申請している」「午後8時以降の営業実態がないのに申請している」など約300件の情報提供があるという。一方、対象外にもかかわらず受給し、のちに返納を申し出た事例は1件だという。
同課は「書面で審査し、支給している。支給後も情報提供を基に調べ、不正が明らかになった場合は返納を働き掛ける。県警とも連携して対応している」と話した。