いつも受け身な社員がいます。どうしたらいいでしょうか?<沖縄お仕事相談デスク>


この記事を書いた人 Avatar photo 田吹 遥子

今回のお悩み

 指示されたこと以上の仕事をやろうとせず、常に答えを求めてくる社員がいます。新入社員ならまだしも、ある程度経歴があるにも関わらず、いつも受け身の姿勢。

もっと自発的に行動してもらいたいのですが、どうしたら良いのでしょうか。

 

今回の回答者は…

組織づくりならお任せ!

Cosmic Consulting代表で組織コンサルタントの

波上こずみさんです。

 

組織づくりの課題としてよくあるご相談の一つが「受け身社員への対応方法」です。

予測不可能な時代に入り、経営者や上司が全ての答えを持っているとは限らない環境になっています。こうした中、常に受け身姿勢で積極性が足りない社員が増えているという悩みを抱えている組織は少なくありません。

しかし、「主体性を持て!」と言ったところで、人が育つわけではありません。そもそもそのかけ声自体が、指示を出していることになり「受け身社員」を助長しているようなものです。

では、受け身社員になってしまう背景には何があるのでしょうか。それは主に次の3点にまとめられると思います。

 

■居心地の良さ

そもそも最初から受け身だった人はいないと思います。

これまでの職歴や今の企業に入社してからの経験などで「自ら積極的に行動するリスクより、周囲の空気を読みながら言われた通りに行動した方が楽だ」という考えが染みついてしまい、受け身の行動が習慣化してしまっているケースがあります。

 

■負担が増えることへの恐れ

自ら考えて動いてしまうと、今以上に忙しくなるのではないか、余計な負担が増えるのではないか、自分の生活やペースが乱されてしまうのではないか、という不安を感じて受け身になるパターンです。

自分は今以上のことを抱えられないという不安から「与えられたことだけやっていればいい状態」になってしまうのです。

 

■自信のなさや諦め

以前の経験や他人の言動などから「どうせ私が考えても無駄」「上司がいつも考えてくれるから私の意見は必要とされていない」「私が余計なことをしてみんなに迷惑をかけたくない」と諦めているという要因もあります。

自己肯定感が持てず、自分なんてと思ってしまうが故に、上司からの指示通りに動くことを無意識に選択して自己防衛している状態です。

 

では、主体的に動いてもらうためには、どのような取り組みが必要でしょうか。

(1)傾聴する

受け身社員になってしまっている要因がどこにあるのか、個人によって様々だと思います。

「受け身がダメだ!!」と責める前に、なぜその行動になってしまっているのか、本人から話を聞いてその背景を探ってみましょう。

 それは指導をする場ではなく、あくまで傾聴をする場としっかりと区別して、できるだけ安心安全な状態を作ることがポイントになります。一度で深堀できないことが多いので、回数を重ねて傾聴をすることをお勧めします。

 

(2)考えさせる訓練をする

業務を任せる時に、全て指示を出すのではなく、本人が考える余地を残すことです。

「この業務のこの部分、あなただったらどうする?」

「どんなやり方がいいと思う?どうしてそう考えるのか聞かせてほしい」

問いかけの仕方はいろいろあるかと思いますが、どうしたら相手が実際に考えて行動するか、相手に合わせた言葉で声かけをすることが必要です。

威圧感を与えずに、あくまで本人からアイデアを引き出すという点に主眼を置いてください。「考えさせる」という仕組みを業務の中に入れておくことがポイントになります。

そして、相手が考えた内容に対して0か100かで評価をせずに、考えて行動したことを認めて、改善に向けてフィードバックをする。業務を通してこのサイクルを何度も回していくことが大事です。

 

(3)求めている役割や成長のステップを見える化する

受け身社員の中には、「自分は役割を果たしている」と現状に満足している場合もあります。経営者や上司は「いやいや、もっと主体的にどんどん動いてほしいんだよ」と感じており、そこに解釈のズレが生じている場合、本人にどう声をかけてもそのズレはなかなか縮まることはありません。

 

この場合は、ぜひ求める役割や期待していることを見える化してみてください。

「この部署(役職)の人にはこういう役割を求めている」ということを社内もしくはチーム内で話し合って、全体で共有してみてください。

 

その指標をもとに本人と面談をしながら、

・既に達成できていること

・これから頑張ってほしいこと

を示し、認識の共有をします。会社のビジョンや戦略に沿った人材が必要だということをしっかりと示しながら、成長したい方向にともに進んでいくことが重要です。

 

コロナ禍により、不測の事態に陥っても生き抜く組織づくりの重要性が叫ばれています。

そのためには、組織内のあらゆる人材にそれぞれの能力を発揮してもらうことが不可欠となります。

受け身社員を放置するのではなく、少しでもその人が意欲を持って能力が発揮できる環境づくりを進めることが、組織やチームのパフォーマンス向上につながっていくのでしょう。

◇執筆者プロフィル

波上こずみ(なみのうえ・こずみ)
Cosmic Consulting(コズミックコンサルティング)代表。組織コンサルタント

子育て・介護と仕事との両立に苦しんだ経験を踏まえ、2016年に起業。

「働く人のモチベーションを組織の活力へ!」をテーマに、沖縄の企業や個人を対象としたコンサルティングを手掛けている。
那覇市首里生まれ。1男1女の2児の育児中。

 楽しく働くためのコツ、チームで成果を上げるためのポイントなどを綴ったnote→ https://note.com/cosmic56