最新作の舞台は名護市安和の集落 新たな視点で捉え直す沖縄 山城知佳子さん、東京で個展


この記事を書いた人 Avatar photo 琉球新報社
「リフレーミング」(2021年、作家蔵、展示風景)

 国道449号を北上すると、風光明媚(めいび)な景色から突如、削り取られむき出しになった岩肌が目に飛び込んでくる。カルスト地形で知られる名護市安和の鉱山地帯である。

 東京都写真美術館で開催中の「山城知佳子 リフレーミング」(10月10日まで)には、山城の初期作品「BORDER」(2002年)から最新作「リフレーミング」(21年)まで計29点が展示されている。最新作は安和の集落が舞台である。

 山城は3年前の正月、ロケーション探しをする中で偶然、この集落を見つけた。「水族館に行くときに必ず通るが、立ち寄ったことはなかった。そこに10軒ほどの集落を見つけ、人が住んでいることに衝撃を受けた」と振り返る。取材し、集落のなりわいや御嶽や船の形をした岩石をまつる「天舟」と呼ばれる聖地があること、砕石会社の海岸埋め立てに反対し橋桁(はしげた)を通すことに至る闘いの歴史などを知った。

東京都写真美術館に展示されている「コロスの唄」(2010年、同美術館蔵、写真手前)と「アーサ女」(2008年、作家蔵)

 作品は、安和の歴史や風景を題材に映画的なナラティブや会話劇も取り入れられ、おとぎ話のような物語が展開されていく。3面のスクリーンからは過去と現在、山と海のつながりが大きな流れ中で紡がれ、出演者による身体表現(ダンス)が身体感覚に訴える。山城は「身体表現で物語を語っている。風景が主人公で、風景の中で役作りが行われている」と語る。

 フィクションの中にもドキュメントのような記録性の要素が作品には盛り込まれている。名護市辺野古の新基地建設で使われる埋め立て土砂の積み込み作業が行われている安和の琉球セメント桟橋で新基地に反対する人たちの活動を捉えた風景は、山城の批評的な視点の表れではないだろうか。

山城知佳子さん

 「リフレーミング」とは、心理学用語で物事を見ている枠組みを変え、別の枠組みで見詰め直すことを指す。山城は作品を通して故郷沖縄の風景を新たな視点で捉え直す。ただ、それは沖縄という特定の地域の問題にとどまらずに、多様なレベルでの読み込みや解釈が可能であるという。

 沖縄戦や米軍基地と向き合い、見過ごされてきた声や魂を伝える作品を手掛けてきた山城は、作品を見る者に問い掛ける。「故郷を撮ってイメージし物語にしてきた。イメージの力を信じ、作品は一つの限定された場所に特化したものにはしていない。皆さんの地域の自然や記憶と結び付くものではないかと思う。遠い沖縄の話ではなく、(自身に)寄せていけば、作品は突然、成長していくのではないか」。
 (問山栄恵)