政府は沖縄を含め19都道府県で新型コロナウイルスの緊急事態宣言延長を決める一方、秋をめどに、緊急事態宣言下でもワクチン接種者らの県外への移動や認証飲食店の酒類提供を認めるなどの、行動制限を緩和する方針をまとめた。観光や飲食を中心に、苦境に立たされていた県内経済界からは、歓迎の声が上がった。改めて強力な支援を求める意見も出た。
沖縄ツーリストの東良和会長は、昨年末に「Go To トラベル」が停止されて以来の明るい兆しだとし、「接種者と非接種者の行動範囲を区別するのは、海外の事例を見ても妥当だと思う。観光業界として1年ぶりにバッターボックスに立てる」と表現した。
11月ごろという開始時期について、「飛行機に乗る沖縄旅行は、2~3カ月前に予約する人がほとんど。早めに方針を示してくれて良かった」と話した。一方で、2021年の売り上げは19年比で9割以上減少するなど厳しい状況が続いており、「感染拡大防止に協力するが、補償をしてほしい」と指摘した。
酒や食材の卸売業は、飲食店の休業や酒類提供停止の影響を受けてきた。南島酒販(西原町)は、業務用卸売りが前年度同期比で1割減となっている。大岩健太郎社長は「稼ぎ時の年末に飲みに行ける状態になるのであれば、行動制限が11月まで延びるのも仕方ない。若者のワクチン接種を早く進めて、飲みやすくなる環境を作ってもらえたらうれしい」と評価した。
青果卸売りの兼正青果(那覇市)の古波倉正紀社長は「緩和のめどが見えてうれしいが、緊急事態宣言が繰り返し延長されてきたこともあり、どこまで信用できるか疑問がある」と不安を口にした。「取引先からの注文が減り、仕入れも抑えている。県には飲食店と取引がある関連業者にも補助してもらいたい」と求めた。
感染対策認証店舗での酒類提供や、ワクチン接種者は会食人数を緩和する方向で検討が進められる。「ライブハウスモッズ」(北谷町)の喜屋武尚代表は「酒類も提供でき、深夜営業ができればありがたい」と率直に歓迎する。ただ「ライブハウスはコロナに感染しやすいという風評被害がある」と懸念も示す。
モッズではライブの有料配信に取り組んでいるが、視聴者が少なく機材に経費もかかるため収益を圧迫している。「県はポータルサイトを整備してライブハウスやミュージシャンを支援してほしい」と要望した。