大浦湾には新種50種 軟弱地盤「米国に発信を」<辺野古・大浦湾シンポ>


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オンラインで辺野古・大浦湾の価値について議論する登壇者たち=11日

 「このまま埋め立て工事が進めば、サンゴ礁の豊かさと価値が永久に失われてしまう」。普天間飛行場の移設予定地となる名護市辺野古・大浦湾の貴重さを知ってもらおうと、沖縄県は11日、オンラインで「辺野古・大浦湾シンポジウム2021」を開催。県と登壇した専門家らで、日米両政府に新基地建設の中止を求める声明を採択した。

 自然環境や土木技術、地理学の専門家ら6人によるパネル討議では、辺野古・大浦湾の生物多様性や価値について議論を深め、新基地建設を止めて海域を保全する必要性を確認した。軟弱地盤の問題に関して「県が主体となって米国に情報を届けるべき」との意見が上がった。

 県立芸術大の藤田喜久教授は、2009年に大浦湾の甲殻類を調査した経験を基に生物多様性の高さを説明した。10日間の調査で約510種類を見つけることができ、うち50種超が日本初記録種や未記載種、いわゆる新種だった。

 藤田教授は「短期間の調査のため、大浦湾の生物多様性の全貌は分かっていない。今後も調査すれば、さまざまな発見があるだろう」と期待した。

 国士舘大の中井達郎講師は、地理学や地形の点から辺野古・大浦湾を分析。「深く切れ込んだ湾」が特徴的だとし、「さまざまな海と陸の出合いで特徴付けられ、多様な自然が育まれている」と説明した。「一帯はまだ謎がいっぱいだ。基地建設のために十分な時間をかけた調査ができていない」と指摘した。

 ジュゴン保護キャンペーンセンター国際担当の吉川秀樹氏は、世界中の海域が対象になったホープスポット認定について「国際的なネットワークが広がる」と意義を強調。今後の取り組みについて「今回議論したような情報、特に軟弱地盤について県が主体となって米国にしっかり伝えることが大事だ」と求めた。

 自然保護制度の研究者で、パネル討議のコーディネーターを務めた筑波大の吉田正人教授は「全国的には『基地建設は進んでいるので今更止められない』という印象を持っている人も多いと思うが、決して(中止するのに)遅くはない」と語った。

 基調講演をした鎌尾彰司氏、安部真理子氏も討議に参加した。