<辺野古・大浦湾シンポ>生物多様性極めて特異/埋め立て、技術的課題多い(基調講演)


この記事を書いた人 Avatar photo 琉球新報社

 沖縄県が11日、オンラインで開催した「辺野古・大浦湾シンポジウム2021」。基調講演では、普天間飛行場の移設予定地となる名護市辺野古・大浦湾の貴重さと、埋め立て工事の問題点が指摘された。


日本自然保護協会保護部主任 安部真理子氏
 

安部真理子氏

 辺野古・大浦湾は、防衛省の環境影響評価でも絶滅危惧種262種を含む5334種の生物が確認されている。世界遺産に登録されているハワイのパパハナウモクアケア海洋国立モニュメントは151万平方キロメートルで、7千種だ。わずか20キロ平方メートルほどに5300種以上が生息する辺野古・大浦湾は極めて特異で、生物多様性が高いことが分かる。

 辺野古・大浦湾沿岸域一帯は2019年に日本で初めて「ホープスポット」に認定された。NGO「ミッション・ブルー」が世界的に重要な海をホープスポットとして認定している。認定で直ちに工事を止める効力はない。一方、世界の著名な科学者たちの支えで世界中に仲間が広がり、認知度が高まる効果がある。

 18年に県と日本自然保護協会は今のようなシンポジウムを開催した。海外の専門家を招き現地を見てもらった上で講演してもらい、県が報告資料を英訳して各国大使館に送った。これらの取り組みがミッション・ブルーの目に留まって声を掛けられたと思う。努力すれば必ず誰かが見ている。

 県の権限で辺野古・大浦湾周辺の保護状況を強化することが必要だ。地元がこの場所を本当に大切にしていると国内外に示せる。

 辺野古・大浦湾が世界的に認められた価値のある海域であることを多くの人に知ってもらいたい。工事の中止と自然の再生など、この海を守ることに関心を持ち続けてほしい。


日本大理工学部准教授 鎌尾彰司氏
 

鎌尾彰司氏

 大浦湾には海面下90メートルにも及ぶ深い谷があり、比較的新しい時代(およそ1万年前以降)に堆積した砂と粘土の軟弱地盤が形成されている。防衛省の調査では、建設工事の設計の際に用いる土の相対的な硬さを示す「N値」について、ほぼゼロが続く。

 埋め立て前に地盤を改良する工事が必要となる。防衛省の計画では約7万本に上る砂などのくいを打ち込む予定だ。作業船が密集することで船同士の衝突や座礁などの問題が想定される。

 軟弱地盤は最も深い地点で海面下90メートルに達しているが、日本国内にある最大級の地盤改良船を使っても海面下70メートルまでしか改良できない。防衛省によると、同70メートルまで打ち込める船も数隻しかない。

 施工機械が届かない20メートル分を未改良のままで埋め立て工事をすると、強度が高くなるまでに長い時間を要する。工事中の沈下量が大きく、施工後も長期にわたり大きな沈下が発生する。

 防衛省は最も深い90メートルまで軟弱地盤が達している地点で直接試験せず、三つの別の地点から強度を推測している。調査データは存在するが、使用していない。強度が強く改良工事が必要ないならまだしも、強度が弱い地点で直接試験しない対応には疑問が残る。

 県民の民意は示されており、技術的な課題も多く残されている。改めて県と国で協議すべきだ。