prime

21歳の引退、新たなゴング…元2冠キックボクサー仲山大雅「子どもたちにチャンスを」<ブレークスルー>


この記事を書いた人 Avatar photo 琉球新報社
大会発起人の仲山大雅さん(右)。大会でMVP賞を獲得した河崎鎧輝(左)と平良美龍(中央)=12日、浦添市の真樹ジムオキナワ

 かつて国内2冠に輝いた元プロキックボクサーの仲山大雅さん(22)=沖縄国際大3年=が、後進の育成に力を注いでいる。自ら協賛企業を集めて今月12日に新たな独自大会を開催し、選出された優秀選手が全国大会に挑あむための交通費を補助する取り組みを始めた。

 県内のキックボクシングでは初の試みという。経済的な理由で県外の大きな大会に出場できない選手も多くいるとし「頑張ってる子どもたちにチャンスを与えたい」と奮い立つ。

■自信植え付けたい

 県勢として初めてWBCムエタイ日本統一フライ級王座に輝くなど全国区の知名度を得ながら、2年前にけがのため21歳の若さで現役を引退した。その後は所属していたRIOTジムでコーチを務め、既にアマチュアの全国王者も育て上げた。近く出身地の宜野湾市内に自身のジムも立ち上げる考えだ。

 今回開いた大会は「全沖縄アマチュアトーナメント2021」。実行委員会形式を採用し、委員長として運営指揮を執った。小学生、中学生、女子、一般の4クラスで計9階級の優勝者を決定。そのうち2人をMVP賞として12月に千葉県で開かれる全国大会へ派遣する。2人合わせて約10万円の交通費を補助する。「子どもたちに自信を植え付けたい」と豪華なトロフィーや盾も用意した。

 開催に向け、自ら大会の資料を手に企業を回って15社から協賛を取り付け、資金を捻出。県キックボクシング連盟の後援も得た。情熱を注ぐ背景には、現役時代の経験がある。

■トップへ選手支援

引退試合で強烈なハイキックを見せる仲山大雅さん=2019年12月、与那原町観光交流施設

 16歳でプロデビューしたが、当初はファイトマネーも安く、県外での試合に出場すると遠征費でいつも赤字が出た。県内を拠点に全国レベルで継続して活躍するのは容易ではなく、アマチュアではファイトマネーもない。「大人なら企業に支援をお願いすることもできるけど、子どもだと経済的に無理と言われたら挑戦すらできない」と課題を感じた。「トップを目指すなら主戦場はレベルの高い県外になる」と県内の競技力向上も視野に、支援開始を決意した。

 今回、MVPの一人に選ばれた一般の部65キロ以下級の河島鎧輝(14)=真樹ジムオキナワ=は「普段は親に交通費を出してもらっている。補助はうれしい。支援してもらえると、もっと頑張ろうと思える」と笑顔で話した。

 今後は同様な仕組みで、プロ向けの大会開催も模索する。「キックボクシングは同じ格闘技でもボクシングや空手などに比べてまだまだマイナー。でも他の競技に負けないくらい魅力を感じてもらえるものにしたい」と目を輝かせる。競技への愛と情熱を胸に、精力的な活動を続ける。

(長嶺真輝)