首里・円覚寺の仁王像を復元 沖縄戦で大破、13片残存 県博が初公開


この記事を書いた人 Avatar photo 嶋野 雅明

 沖縄県立博物館・美術館(田名真之館長)は17日、沖縄戦で大破して胴体や足など13片の残欠のみが残っていた首里・円覚寺の仁王像の模造復元品を完成させたと発表した。田名館長らが同日、記者会見を開いて報告し、模造復元品を初公開した。完成した仁王像は、阿形(あぎょう)と吽形(うんぎょう)の2体。台座も含めると高さは約2メートル50センチ。新型コロナウイルスの感染拡大に伴う臨時休館の影響もあり、沖縄での展示は2022年秋以降となる見通し。

【動画と写真】のみの痕も緻密…76年ぶり復元

 今回の模造復元は、国の一括交付金を活用した「琉球王国文化遺産集積・再興事業」の一環。同事業では、円覚寺の仁王像を含め、8分野65件の美術工芸品などを模造復元した。同事業で研究者や技術者、職人の力を結集して蓄積した知見は、今後も沖縄戦や首里城火災などで失われた琉球の文化関連の資料を復元していくことにも役立てることができる。

 首里の円覚寺は琉球王家(尚家)の菩提寺として1492年に完成した。仁王像は同時期に室町時代だった日本でつくられ、円覚寺の総門に安置されてきたとみられる。1933年には円覚寺は国宝に指定された。1945年の沖縄戦の際に仁王像も含めて爆風などで破壊され、残っていた部分を周辺住民らが拾い集めるなどしたという。

 そうした残欠や、日本各地にある類似した仁王像を分析し、戦前の姿を知る人たちからの聞き取り調査、科学分析を駆使した。調査期間を含めると約6年間かけて完成させた。

 今回の仁王像2体を含め、琉球王国時代の美術工芸品などの模造復元品を展示する企画展「手わざ―琉球王国の文化」が10月19日から12月12日まで、九州国立博物館(福岡県太宰府市)で開催される。2022年1月15日から同年3月13日まで、東京国立博物館でも開催される。東京では仁王像は展示されない。

 田名館長は「今回の事業で大変貴重な経験が得られ、今後も琉球王国時代の遺産を復元していける。首里城火災で被災した文化財の修復、復元にも貢献できると思う。展示の際には、琉球王国の文化の粋を見ていただく機会になる」などと意義を語った。