困窮家庭の赤ちゃんにミルクを 無償提供、広がる支援の輪


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髙良久美子代表

 経済的な事情で赤ちゃん用の粉ミルクを買えない家庭を支援しようと、沖縄県内で取り組みが広がりつつある。ボランティアや行政窓口、薬局、フードバンクセカンドハーベスト沖縄などが連携する「ベビーミルク支援プロジェクト」。主に生後すぐから1歳半までの赤ちゃんがいて、経済的に困窮する家庭に無償でミルクを届ける。全国的にもあまり例のない、ミルクをメインにした支援だ。

共育ステーションつむぎ(那覇) 20年度567缶 子育て課題 掘り起こしも

 活動の中心を担う「共育ステーションつむぎ」(那覇市小禄)の髙良久美子代表(59)は「助けが必要なママやパパは、つむぎや各窓口に相談してほしい。子育てを応援している人はたくさんいる」と呼び掛ける。ミルクは1缶2千円前後。月齢によっては月に数缶必要となり、経済的負担が増す。髙良さんによると、節約のために水で薄めて飲まさざるを得ない家庭も少なくないという。

 そこで「つむぎ」は各団体、個人から、ミルクの寄贈や寄付を受けて各家庭に届けるプラットホームの役割を果たす。月500円の会費や寄付も全てミルクの購入に充てる。3日には沖縄ライオンズクラブから約50万円の寄付を受け、髙良さんは「こうした支援で赤ちゃんの命を守ることができる」と感謝を述べた。

 ミルクは本島内に限り髙良さんらボランティアが個別宅配で届けている。協力機関にミルクを必要とする人が相談に来た場合、機関からの依頼を受けて、必要な分だけ提供する。個々の支援の目安は3カ月だが、状況によって継続することもある。ミルクと一緒に寄贈されることがあるオムツやベビー服、離乳食なども必要に応じて届ける。

 活動の始まりは2018年。当時、那覇市母子寡婦福祉会の職員だった髙良さんが、同市社協から経済的な理由でミルクを買えない家庭があることを聞き、社協の支援に役立てもらうため自費でミルクを毎月2缶ずつ寄贈するようになった。2020年3月以降、新型コロナウイルスの感染拡大で経済的に困窮する家庭が増えた。髙良さんは知人などからも寄贈の協力を募り、徐々に活動を広げ、同プロジェクトが本格的に始まった。支援を必要とする世帯は増え、20年度の支援数は567缶に上った。21年7月には、ひと月で過去最多となる88缶を届けた。

 髙良さんは「ただミルクを渡して支援が終わるわけじゃない。その先が大切だ」と話す。ミルクをきっかけにして助けを必要とする世帯を掘り起こし、適切な支援へとつなげられるように、各機関との連携を重視している。今後は離島での支援も始める予定だ。「妊産婦、乳幼児からの切れ目のない支援ができるよう活動を続けていきたい」と意気込みを語った。問い合わせはつむぎ事務局(電話)090(9782)6249。またはフェイスブック@station.tumugiやLINE公式アカウント@838chaqcまで。
(嶋岡すみれ)


ベビーミルク支援の協力機関

 ボランティアや行政窓口、薬局、フードバンクセカンドハーベスト沖縄などが連携する「ベビーミルク支援プロジェクト」の取り組みは県内各地に拡大する。市町村の協力機関は次の通り。