〈77〉眠る技術 臥床時間調整で不眠改善


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 琉球新報読者のみなさん、こんにちは。2018年に「南風」のコラムを執筆していた睡眠専門医の普天間国博です。今日は睡眠薬だけに頼らない眠る技術についてお話ししたいと思います。

 長年、睡眠専門外来で診療を続けていると不眠症患者さんの心理状態で分かってきたことがあります。不眠症になると少しでも長く眠ろうと臥床(がしょう)時間が極端に長くなる傾向があるようです。しかしこれは逆効果です。例えば頑張っても4~5時間しか眠れない人が10時間も臥床すると眠れない時間の方が長くなってしまいます。

 ベッド上で眠れない時間は精神的苦痛のため自覚的には何倍にも長く感じます。その結果、実際に数時間は眠れていても「ほとんど眠れない」と感じてしまいます。こうなると睡眠薬を内服しても自覚的効果は乏しくなります。

 5時間以上眠れなければ「遅寝早起き」で臥床時間を6時間に短縮してもかまいません。これは「睡眠制限法」と呼ばれており、ベッド上で眠れない時間を減らすことでストレスを軽減できるメリットがあります。途中で目が覚めて再入眠できないときは、いったん寝室から離れてリラックスできる気分転換を図り「眠くなってからベッドに入る」ことも重要です。

 寝室ではテレビやスマホなどブルーライトや興奮が高まる刺激は避け、「ベッドは眠るときのみ使用する」というのが基本で、これは「刺激制御法」と呼ばれています。臥床時間の短縮は「眠気を貯める」効果もあります。夜まで眠気を貯めるには起床時間を遅らせず日中の活動性を高めて昼寝は20分以内に抑えたいところです。

 以上、睡眠薬だけに頼らない不眠対処法についてお話ししましたが、睡眠薬は絶対悪ではありません。難治性不眠で睡眠薬がどうしても必要な患者さんもたくさんいます。睡眠薬は「怖がり過ぎず頼り過ぎず」で適正使用で安全性を高めることが重要です。

(普天間国博、琉球大学病院・精神神経科)