琉球新報社 
ジャズピアニスト・ジェイコブ・コーラーの沖縄初となるコンサート（琉球新報社主催）が10月10日、那覇市の琉球新報ホールで開催される。テレビ番組の企画「ピアノ王決定戦」で優勝し、ピアノ演奏動画を扱うYouTubeチャンネルは、約45万人が登録。非凡なピアノアレンジと卓越した演奏技術で、再生数百万超えの動画をいくつも生み出している天才ピアニストに、公演への思いを聞いた。 （聞き手・藤村謙吾）
―ジャズピアノは何をきっかけに始めたのか。
「3歳上の兄の影響で4歳からピアノを習い始めた。小学校2年生の頃から、父が監督を務める合唱隊で伴奏をするなど、クラシックばかり演奏していた。高校でジャズバンドの監督に誘われて、初めてジャズに触れた。それまでは何ページもあるソナタなどの楽曲を暗譜して弾いていたこともあって、譜面にとらわれず自由に弾けるジャズのスタイルが楽しかった」
―高校時代から、レストランやラウンジでライブをして学費を稼いでいた。いつから、プロの道を志したのか。
「大学生の頃からオリジナル曲を書いていた。2007年に『コール・ポーター ジャズピアノフェローシップ』で全米各地の応募者の中から、ファイナリストの5人の内の一人に選ばれた。ポーターの出身地・インディアナ州に渡り、プロのバンドと一緒に立派なジャズクラブや千人規模のホールで初めて演奏した。自分のアレンジを基に楽譜を書いてくれるなど、実力を認めてもらえていると感じ、プロとして頑張ろうと思った」
―2009年に日本に移り住み、ピアノ教室を開いた。きっかけはあったのか。
「2004年に、当時組んでいたバンドとライブツアーをすることになり、初めて日本を訪れた。その際、ソロライブをしていて驚いたことがあった。米国と異なり、小さなレストランでも演奏が始まるとみんな静かに聞いてくれる。とても緊張をしたが良い体験だった。ピアノ好き、ジャズ好きの人も多く、さまざまな刺激を受けた。そこから日本語の勉強を始めた」
―日本語はどのように覚えたのか。
「高校生時代にジャズを勉強したとき、キース・ジャレットなど好きなピアニストの音源を聞いて、譜面に起こしてまねをしていた。毎日やると、音に慣れて、何のコードを弾いているか分かるようになる。日本語も同じように耳の訓練をしたらいいと思って、音楽と同じで耳コピ（耳で聞いて覚える）した。カウボーイビバップやサムライチャンプルーといった好きなアニメを日本語と日本語字幕で見て、知らない単語が出ると辞書を調べて覚えた」
―来日した年、偶然が重なり音楽や映像ソフトを取り扱う「新星堂」の60周年記念CDをリリースした。順調に日本でのキャリアをスタートし現在は、ピアノ教室を開く傍らYouTuberとしても活躍している。
「YouTubeは4、5年前から本格的に始めた。『ルパン三世のテーマ』（883万再生）や『ラ・ラ・ランド』（675万再生）をアレンジした曲に良い反応があり、力を入れ始めた。ストリートピアノを演奏する動画配信も約2年前から始めた。コンサートと異なる緊張感があり、楽しんでいる」
―即興のアレンジにも定評がある。公演を楽しみにしている沖縄の人へメッセージを。
「即興演奏は一期一会。その日の天気、気分、ピアノの調子、ホールの響き、お客さんの反応、曲の並びなど、全ての様相を（自分の中に）取り入れて演奏している。初めて沖縄に行くので、たくさんの刺激を受けると思う。気合を入れて演奏したい」
沖縄の曲もアレンジ
コンサートでは1部で「ルパン三世のテーマ」や「ジブリメドレー」、「夜に駆ける」などおなじみの曲をジャズピアノ・アレンジで演奏し、2部はバンドスタイルでジャズスタンダードをはじめ、沖縄の曲のアレンジも披露する。2部共演は中村亮、高尾英樹。
午後4時開演。チケットは一般3300円。大学生以下2200円（当日共に500円増）。問い合わせは琉球新報社広告事業局（電話）098（865）5255（平日午前10時から午後5時）。
Jacob Koller（ジェイコブ・コーラー） 1980年米国アリゾナ州・フェニックス生まれ。高校入学までに「アリゾナ・ヤマハ・ピアノ・コンクール」など10以上のクラシック・ピアノ・コンクールで優勝。高校でジャズの才能を開花させる。YouTube総再生数は7300万回を超え、総登録者数は45万人。YAMAHAのオフィシャルピアノアーティスト。5月に、人気のJ―POPやアニメなどをジャズ・アレンジした新譜「ジャズ・ピアノ巡り」を発売。
Jacob Koller Jazz Piano Concert ジェイコブ・コーラー ジャズピアノコンサート
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