冒険活劇、光る演出 芝居観賞教室「黒島王物語」沖縄芝居の魅力伝える


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真乙金の救出に向かう(左から)百千代(山城崚称)、虎寿金(上原崇弘)、金松(比嘉大志)=16日、浦添市の国立劇場おきなわ

 国立劇場おきなわが16、17日の両日に同劇場で、沖縄芝居鑑賞教室「黒島王物語」(渡嘉敷守良作、髙宮城実人演出)を開催した。劇場芸術監督の嘉数道彦の解説を挟みながら、1部で古典舞踊2題と雑踊2題、短編歌劇「茶売やー」、2部で「黒島王物語」を上演し、琉球芸能の歴史や大衆芸能として愛される沖縄芝居の魅力を伝えた。16日公演を取材した。

 聡明な長男・虎寿金(上原崇弘)、次男・金松(比嘉大志)、三男・百千代(山城崚称)の三兄弟は、黒島王(当銘由亮)に「この世に二つとない宝を持ってきたものを一人娘・真乙金(平田晴香)の婿にする」と言われる。3人はそれぞれ、遠方へも空を飛んでゆける「飛び衣」、どんな場所でも見える「遠見鏡」、死人を香りで生き返らせられる「桃」を手に入れる。浮かれていたところ、遠見鏡を通して死の淵にある真乙金の姿が見え、飛び衣で急ぎ救出に向かう。

真乙金(右・平田晴香)の命を奪おうとする毛雲(川満香多)

 黒島王の城を乗っ取ろうとし、真乙金の命をも奪う悪役・毛雲を川満香多が演じた。ドライアイスの煙が立ちこめる中、花道のセリから登場する場面から、川満の堂に入った悪役ぶりが光った。三兄弟は過不足なく演じ、共に真乙金の元へはせ参じる場面は、3人の背景に漫画における集中線のような映像を投影し、スピード感を演出した。

 真乙金の命を救った後、金松と百千代は、「遠見鏡」と「桃」が持つ不思議な力で幻影を生み出し、自分たちの代わりにチャンバラや太鼓で勝負をさせる。幻影として舞台に現れた金城真次と玉城匠らの緩急の利いた芝居が笑いと拍手を誘った。三兄弟と毛雲の対決シーンの殺陣は、毛雲が突如手から糸を出したり、退治されて舞台上から姿を消したり手品のような楽しさがあった。展開の速い冒険活劇を、古典的な手法と現代的な手法を用いるハイブリッドな演出で盛り上げた。

 ほか出演は座喜味米子、伊藝武士、比嘉克之、小嶺和佳子、安次嶺正美、知念亜希、古謝渚、高里風花。歌三線が花城英樹、平良大。箏に比嘉千咲、笛に大城建大郎、太鼓に久志大樹。

1部で上演した短編歌劇「茶売やー」の一場面

(藤村謙吾)