「ハイサイ新婚さん」玉城愛さんが始めた「出会いの場」 コロナ下の一歩とは?【WEB限定】


社会
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玉城愛さん

 1年半以上続く新型コロナウイルスの感染拡大。あらゆる業種が影響を受けているが、中でもブライダル業界は閉館する式場が出始めるなど、状況が深刻な業界の一つだ。披露宴の司会や、新婚カップルを取り上げたテレビ番組のリポーターをしてきた玉城愛さんも2020年3月以降、仕事が激減した。そんな逆境の中、玉城さんは新たな一歩を踏み出した。「私が今持っているものは何か。何ができるのか」を見つめ直して、出した答えとはーー。

(玉城江梨子)

■「出会い」の専門家

  玉城さんと言えば、沖縄テレビ放送で30年以上続く長寿番組「ハイサイ新婚さん」のレポーターとしておなじみ。レポーター歴は約20年。結婚披露宴の司会としても500組以上の新婚カップルを見てきた。

 「人を結びつけたり、恋バナを聞くのが好き」という玉城さんにとって、天職とも言える披露宴関係の仕事がコロナ禍で「消失」してしまったことはつらいことでもあった。しかし、空いてしまった時間でこれまでの自分の仕事を振り返ることにもつながった。

 披露宴の司会をする時には、新郎新婦の生い立ちから出会いまでじっくり聞く。ドラマのように何度も偶然会ったことから交際に至ったカップル、いわゆる「美女と野獣」カップルなど、データだけでは分からない不思議な縁がある。一見「なぜこの2人が?」と思うカップルでも話を聞いていくと「結ばれるべき人と結ばれている」と感じる。司会をするために聞き取ったことはすべてメモし、大事に保管。「出会いを人よりも多く知っている」ことが自分の強みだと気付いた。

■沖縄は出会いの場が少ない?

 ではその「出会い」の機会はどうなっているのだろうか。

 婚活中の同年代の知人を見て以前から感じていたのが、出会いの場の少なさだった。周りを見渡しても夫婦やカップルは同級生や職場恋愛。出会いの場として合コンがあるが、お酒の場が苦手な人や口べたな人もいる。そんな人はどうすればいいのか。サークルなど趣味を通じて出会うにも、「いいな」と思う人が独身とは限らない。コミュニティが限られている沖縄は、出会いの場が意外と少ないのではないか。

 一方、人と会うことが制限され、人と距離を取ることが日常となったこの1年半。人々の生き方や価値観も少しずつ変わってきている。バリバリ働き、これまで「1人で生きていける」と考えていた友人たちも、コロナをきっかけに「やっぱり1人はさみしい。パートナーがほしい」と感じ始めている。「これまで以上に出会いの場には需要があるのではないか」 と仮説を立てた。

農業体験をする受講生たち

■独身者限定のカルチャースクール

 そして行き着いたのが、安全な出会いの場を作るーということだった。日本仲人連盟優良結婚相談室の資格も取得し、2021年3月、「いちゃりばスクールAI OKINAWA」という出会いの場を立ち上げた。

 ここでは、従来の婚活パーティのような改まった形ではなく、ジョギング、畑の植え付け、ビーチクリーンなど、好きな体験を通じて出会う。「たとえば怖そうに見える人が、動物と接しているときにとても優しい表情をしていたりすることがある。そんな一面にきゅんとしますよね」。言ってみれば独身限定のカルチャースクールだ。安全性を担保するため、独身証明書や勤務証明書、収入証明書の提出も義務づけ、入会時には面接もする。

 結婚相談所ではないため、結婚を目的にはしない。結婚に結びついたとしても成婚料は発生しない。「本当は結婚はゴールではなくスタートだし、今は結婚という形をとらない人もいる。まずは自分が楽しんで、その先に自分と合ういい人と出会えるーそんな場を作っていきたい。おせっかいかもしれないけど、私はやっぱり、恋バナが好きなんです」。テレビでいつも見るあの笑顔を見せた。

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