【中城】小児がんでまれな「腹膜悪性中皮腫」で闘病中の琉大付属小5年・金城楓空さん(11)が10月22日で腫瘍を切除した最初の手術から1年を迎える。今年7月の人工肛門閉鎖の手術までに手術を5回経験した。12日までに本紙の取材に応じ、「長かった。手術後は何をしようかと楽しいことを考えて乗り越えた」と振り返りながら、支援者への感謝の気持ちや今の心境を語った。
「手紙たくさん」に感謝
体調に異変を感じたのは2019年4月ごろ。県内の病院で検査を受けたが、診断はつかなかった。東京の国立国際医療研究センターを紹介され、腹腔鏡の手術後に腹膜悪性中皮腫と診断された。
父の均さん(60)と母の美香さん(50)はその時のことを「受け入れ難かった」と語る。疫学調査も進んでおらず、原因も不明だった。
最後の手術を除き全て保険適用外だった。高額な治療費捻出のため支援者らが「ふうあの会」を設立。20年10月に募金を呼び掛けた。翌日には300件を超える問い合わせがあるなど、支援が広がり、目標額2千万円を達成した。「手紙もたくさん届いて、うれしかった。本当にありがとうございました」と繰り返す。
20年10月22日に腫瘍のある臓器の切除と抗がん剤を循環させる化学療法が実施され、合わせて10時間以上に及んだ。術後は集中治療室で過ごした。管でつながれ、身動きするたびに傷に響いた。それでも「退院後は何しようかなと考えていた」。やりたいことや食べたいものをまとめたノートには、「ラーメン、じゅーしぃ、マック、海ブドウ」「新大久保」などの言葉をつづった。退院後は一つ一つ楽しみながら実現したという。
21年7月の手術まで、全てを担当した合田良政医師は「同じ病気の方に30人以上関わってきたが、子どもは初めてで戸惑いも大きかった。これまでの経験は彼女のためにあるのかと思うほどだった。気丈で、本当に尊敬の気持ちでいっぱいだ。これからも見守りたい」と振り返る。
楓空さんは全ての手術を終え、経過観察をへて5年後の完治を目指す。現在は学校に通う。「今まで通えなかった分、とても楽しい」と笑顔を見せる。自身の手術や人工肛門の体験を「ストマとのゆうじょう」と題し、冊子にまとめた。今後、各学校や小児病棟などへの提供を考えている。自身と同様に病気で苦しむ子どもたちに「悪いことでも何でも楽しく考えれば乗り越えられるよ」とエールを送った。
(新垣若菜)