沖縄芝居「私財投げ打ってでも」 利益確保が困難でも公演継続<続・舞台の灯をつなぐ>3


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30年ぶりの上演に向けて、沖縄芝居公演「北谷シベー物語」の稽古に熱が入る大伸座の座員ら。コロナの第5波の影響で中止に追い込まれた=7月27日、浦添市の国立劇場おきなわ

 定期的に公演を打つ沖縄芝居の劇団は近年、10前後あるが、新型コロナウイルス感染症の流行が始まった2020年3月以後、自主公演は大きく減少した。コロナの感染防止の観点だけでなく、コロナ対策にかかる経費の増加や、席数が半分になることによる利益確保の難しさも要因とみられる。結果、文化芸術活動の継続を支援するための補助金や助成金、新型コロナの感染拡大前からある県伝統芸能公演(かりゆし芸能公演)に関した補助金などを利用してのものが大半となった。一方で、中堅・若手の役者が中心の「沖縄芝居研究会」が存在感をみせた。

 沖縄芝居研究会は2020年3月以後、関連団体も含めて四つ公演を打った。その内、13人の子どもが出演した「はるぬ七ち星」を含め、補助金を利用した公演も二つあったが、全て赤字だった。それでも同会の伊良波さゆき代表は「私財を投げ打ってでもやる意義がある」と話す。

 通常の企画は1年ほど前から考えるが、「はるぬ七ち星」は子どもの出演者をそろえる必要もあり、倍の2年以上かけて準備を進めてきた。子どもたちに、客席から拍手をもらう感動を味わわせ、未来の芸能活動につなげてもらいたい一心で、機を逃さないよう開催を決意した。「子どもの時期は今しかない。大人も同様で、20代、30代でしか学べないものがある。将来のことを考えると『コロナが終わってから』とは言えない。立ち止まるわけにはいかない」

 2019年に旗揚げ70周年を迎えた「大伸座」は、20年3月以後、2公演が中止になった。その内8月に予定していた公演はコロナの第5波が急に迫ってきたこともあり、本番の約2週間前に出演者に中止を伝えた。大伸座の大宜見しょうこ代表は「衣装合わせの日だった。必死に稽古をし、本番の衣装を手にする団員を前に、中止を伝えるのが申し訳なかった」と振り返る。それでも、昨年11月に続き、ことしも11月に「丘の一本松」の公演を行う。

 大宜見代表は「止まると終わる気がするから続けている。大伸座を旗揚げした大宜見小太郎さんは空襲の中でも、舞台をやっていた。舞台をはじめ、エンターテインメントが精神的な支えになっている人がいる。コロナの中だからこそ、舞台は私たちだけのものじゃない。高齢のお客さまにとっては今の舞台が大事で、『また来年』があるとは限らない」と話す。ことしの「丘の一本松」も、これまでにない配役や演出を計画している。「お金のことは考えず、お客さまを楽しませることを考える」と、次の舞台に向けて声を弾ませた。