【深掘り】沖縄県は「見切り発車」 名護市は「協議不要」 辺野古新基地・美謝川切り替えへの市政交代の影響


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辺野古ダムからキャンプシュワブ内に流れる美謝川=2014年撮影

 米軍普天間飛行場の名護市辺野古への移設に伴い、沖縄防衛局が1日に着手した美謝川の水路切り替え工事は、県と協議しているさなかの「見切り発車」(県幹部)となった。新基地建設反対を掲げた稲嶺進前名護市長は工事について「市と協議が必要」と主張していたが、移設を事実上容認する渡具知武豊市長は「(関連する)洪水吐き付け替え工事であれば協議不要」と説明。市政が代わったことで手続きの関門が減り、防衛局は県との協議を無視して工事を強行した。

 稲嶺氏は美謝川切り替え工事の協議を辺野古新基地建設阻止の「切り札」の一つとしていた。防衛局は2014年9月、水路ルートの計画変更を県に申請したが、県からも指摘があり同年11月に取り下げた。

 18年2月に誕生した渡具知市政は辺野古新基地建設への賛否の言及を避け続けている。市関係者は「市長は辺野古に絡むことは全て距離を置くと決めている」と声を潜める。

 今回も市は「明らかに条例上必要な協議があれば防衛局から照会があるが、市から協議は要請しない」と従来の説明を繰り返す。国は市の姿勢を「市と条例上の協議は不要」(防衛省関係者)と解釈している。

 県は、水路切り替えについて防衛局との協議やその準備を進めており、環境保全などについて今年5月から計5回、問い合わせていた。工事着手の1日には停止を求める文書を出した。

 森林伐採などを行う林地開発も5月に防衛局が県に協議を申し入れた。県は事業の実現可能性を示す書類が含まれていないとして受理せず追加提出を求めたが防衛局は応じず「平行線」(県関係者)をたどった。防衛局担当者は「国の事業は森林法で知事との許可や協議は必要とされていない。(着工は)違法ではない」と正当性を主張した。県幹部は「市との手続きと県の手続きは別で、それぞれ必要なものだ」とくぎを刺した。

(喜屋武研伍、明真南斗、塚崎昇平)