〈78〉夜間の頻尿 体重に応じ水分摂取を


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 夜間に排尿でトイレに起きなければならず苦痛な状態を夜間頻尿といいます。夜間頻尿は高齢者の苦痛な症状の第一位に上げられており、夜間2回以上排尿に起きる高齢者はそうでない高齢者に比べて寿命は短いのです。

 夜間頻尿の一番の原因は水分の摂(と)り過ぎです。頻尿で脱水にならないようにと水分を摂っている方が少なくないのですが、体内の水分量が多いから頻尿になっているのであって、体内水分量が少なければ尿量も少なく頻尿にはなりません。

 デイケアでは少し運動すると汗もかいていないのに水を飲まされて、水分の摂り過ぎとなっています。水分を摂り過ぎると血液量が増えて、血液を循環させる心臓に負担をかけます。日中は心臓より下の下半身に水分がたまりやすく心臓への負担は少ないのですが、夜横になると下半身の水分は血管に戻って血液量が増えるため、心臓は増えた血液を頑張って送り出さなければなりません。

 そのため、心臓に負担がかかり、心臓は腎臓に対して尿を多く作って血液量を減らすように指令を出すため、夜間に尿量が増えます。つまり、夜間の尿量の増加や夜間頻尿は心臓の負担を反映しており、夜間頻尿で寿命が短くなる理由は水分の摂り過ぎで心臓を徐々に弱らせているためです。水分不足の熱中症でなくなる方は年間数百人ですが、夜間頻尿が寿命短縮に影響したと考えられるのは計算上は年間十数万人に達します。そしてその80%は水分の摂り過ぎが原因と考えられます。

 1日に摂るべき水分量には個人差がありますが、体調の維持に必要な尿量は、体重(キロ)×20ミリリットルまたは×25ミリリットルです。体重60キロなら1200~1500ミリリットルが適正な1日の尿量です。夜間頻尿なら、1日の尿量を測ってみて適正尿量となるように水分摂取量を調節しましょう。

 夜間頻尿の原因にはその他に高血圧、睡眠障害や膀胱(ぼうこう)自体の疾患がありますが、誰もが対処できるのは水分を取り過ぎないことです。脱水気味の場合には足がつることがありますが、その時にはスポーツドリンクで水分と塩分を補給するのが良いでしょう。

(菅谷公男、北上中央病院・泌尿器科)