【記者解説】座間味村職員の横領、なぜ発覚遅れた? 会計1人で…ずさん管理が背景に


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座間味村と那覇を結ぶ「フェリーざまみ」。後方左側のビルは村の那覇出張所が入る「とまりん」=那覇市前島

 【座間味】座間味村の那覇出張所長だった40代元職員が、村営定期船の売上金約3282万円を横領していた問題で、村は9月28日、元職員を業務上横領の疑いで那覇署に刑事告訴した。事件を調査する中で、関与した人物は不明だが、別に482万円余が横領された疑いがあることが分かり、被害届を提出した。度重なる横領は会計を1人に任せるなど、ずさんな管理体制が背景にある。

 横領は、元職員が那覇出張所長在任中の2016年4月~21年3月の間に起きた。匿名の通報が村に寄せられ発覚した。ほかの職員の退勤後、高速船やフェリーの乗客の一部がキャンセルしたと装い、伝票を改ざんして運賃を着服。

元職員が所長を務めた座間味村那覇出張所=1日、那覇市泊

 数字を合わせるために乗船名簿の一部を破棄していた。着服金はギャンブルなどに使ったという。

 元職員は現金、通帳、入金伝票、集計表などを1人で管理していた。那覇出張所には所長と職員4人の計5人が勤務していたが、正職員は少なく、19年度以降の正職員は、今回横領した元職員1人だけだった。村関係者は「売上金などはすべて正職員の所長に任せていた」と話す。

 元職員はまじめで勤務態度もよく、他からの評価は高かった。今年4月には産業振興課の課長補佐に昇進した。村関係者は「職員を信頼し過ぎたことが、管理体制を甘くしてしまった」と吐露する。

手口を共有か

 新たに発覚した横領は14年12月~16年3月末で、元職員の事案の以前に起きていることから、別の人物による犯行とみられる。手口は同様で、村関係者は「手口が一部共有されている可能性がある」との見方を示す。14年12月以前についても横領の可能性が否定できないというが「資料の保存期間が過ぎ、証拠書類が残っておらず調べられない」という。横領した職員の特定を含め、今後は警察の捜査に委ねる。

再発防止策

 村観光協会の元臨時職員が17~18年に95万円を着服していた件も判明しており、同村では相次いで横領が発覚している。村内に住む女性は「公務員としての自覚が足りないのでは」と批判した。

 那覇出張所の正職員は1人のままだが、村は再発防止策として「集計表などを役場宛てにファクスで送り、乗船名簿と売上金を互いに照合するなどしている」という。このほか防犯カメラの設置や民間委託も検討している。

 沖縄大の仲地博名誉教授(行政法)は「金銭の扱いが伴う部署では横領の可能性があることを前提に管理体制を構築しなければならない」と指摘。「内部監査の機能強化や経験豊富なほかの自治体職員と人事交流を行うなどして、管理の甘い部分を是正できる仕組みを作るべきだ」と指摘した。

(金城実倫)