HIV検査・相談ゼロの沖縄 民間検査は負担大きく、医師「県独自の体制を」


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 厚生労働省はHIV感染者数とエイズ患者数が全国水準より高い9都府県と、同都府県の11政令指定都市をHIV対策重点地域に指定している。沖縄もその一つに入っており、早期発見につながる検査体制の構築が急務だ。

 エイズ中核拠点病院の琉球大学病院でHIV感染者やエイズ患者の治療に当たる健山正男医師によると、HIV(エイズウイルス)の主な感染経路は、過去には血液製剤による薬害被害者もいたが、現在は性行為による感染、母子感染、注射器具の共用などによる血液・体液を介した感染だ。感染のほとんどが性行為によるもので、沖縄では8~9割が男性同性間の性行為により感染しているとみられる。

 HIVに感染すると、典型例では2週間目から10日以上続く発熱を中心とした風邪のような症状が出て、その後数年の無症状期間を経てエイズを発症する。早期発見すると抗HIV薬を服薬して、エイズの発症を抑えることができる。

 無症状期間にも感染力があるため、できるだけ早く発見することが他者への感染を防ぐ鍵になる。治療によって血液中にHIVが見つからない状態が6カ月かそれ以上続くと、性行為をしても他者へ感染しないとの報告もある。

 厚労省エイズ動向委員会作成の「エイズ発生動向年報」によると、沖縄は2019年の人口10万人当たりのHIV感染者数が0.76人で全国5番目の高さだった。人口10万人当たりのエイズ患者数は0.55人で全国2位と高い。

 保健所で定期的にHIV検査を受けていたという豊見城市在住の男性(44)は「民間医療機関でも検査を受けたが、検査料に5~6千円かかり、待合室などで知り合いに会わないか不安だった。数ヶ月に1回程度でもいいから保健所での検査を再開してもらえたらありがたい」と話した。

 健山正男医師は「早期発見することは、本人のみならず公衆衛生や医療資源確保の観点からも重要だ」と指摘した。

 その上で「保健所の業務量に左右されないように、他都道府県の例を参考にしながら、県独自のHIV検査体制を整える必要がある」と話した。


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