岸田首相、辺野古移設「進める」 所信表明で「丁寧」「対話」を強調


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新たにN2護岸の工事が始まった新基地建設工事現場=8月27日、名護市辺野古(小型無人機で撮影)

 【東京】岸田文雄首相は8日、就任後初の所信表明演説を行い、沖縄の米軍基地問題について「日米同盟の抑止力を維持」することを前提に、「普天間飛行場の一日も早い全面返還を目指し、辺野古沖への移設工事を進める」との考えを示した。菅義偉前首相が言及しなかった「丁寧な説明」「対話による信頼」の必要性を掲げ、地元の理解を得るために、自身の政治信条である「聞く力」を強調した。「ミサイル防衛能力」を含む防衛力の強化に取り組む姿勢を示し、軍事面で台頭する中国への警戒感もにじませた。

 岸田首相は、昨年10月に行われた菅氏の所信表明に続き、米軍普天間飛行場の名護市辺野古への移設の推進方針を明言。一方、工事について「着実に進める」とした菅氏に対し、「進める」との表現にとどめた。移設推進の理由については、普天間飛行場の「危険性の除去」のためとした菅氏に対し、岸田氏は同飛行場の「全面返還」を理由に挙げた。移設に際し、「丁寧な説明、対話による信頼を地元の皆さんと築く」と地元住民の理解の必要性を説くなど、融和的とされる自身の政治姿勢を意識させる表現もあった。被爆地広島県出身であることから、「核兵器のない世界」を目指す方針も明らかにした。

 安全保障政策ではミサイル防衛の強化を打ち出し、「責任ある行動を強く求める」として、軍事力を背景に台湾など周辺地域への圧力を強める中国を踏み込んだ表現でけん制した。