オール沖縄「辺野古」争点化狙う<潮流-2021衆院選>㊤


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合同演説会に臨む「オール沖縄」立候補予定者4氏=9月16日、那覇市内

 「『オール沖縄』が政府を追い詰めているというのが現状認識だ」。

 9月13日、衆院選に立候補を予定する「オール沖縄」勢の4氏が開いた記者会見。保革を超えた枠組みを構築し、名護市辺野古の新基地建設反対を訴えてきた「オール沖縄」の弱体化を指摘する質問が上がった。1区に出馬予定の赤嶺政賢氏=共産=は、2区の新垣邦男氏=社民、3区の屋良朝博氏=立民、4区の金城徹氏=立民=と臨んだ会見で、こう打ち消した。

 その2日後の15日。「オール沖縄」に参画する保守側の象徴的な企業の金秀グループ(呉屋守将会長)が次期衆院選は自民候補を支持すると本紙が報道。過去最多得票を獲得した玉城デニー県政誕生の原動力ともなった「オール沖縄」の足元が揺らいでいる姿が浮き彫りとなった。

 政局の流動化も影響を与える。県内革新勢力を主導してきた社民党県連が2月、同党の全国的な退潮のあおりを受け分裂し、一部は立憲民主党に合流した。「オール沖縄」関係者は、これまで社民が選挙時のまとめ役を担ってきた側面があると解説。立民もまだリードできる態勢にはないとの見方を示し、金秀離脱で「今回はまとめ役がいない」と懸念を口にした。

 「オール沖縄」の衰退が指摘される中、玉城知事は10日、新垣氏の応援で初めてマイクを握った。

 「新型コロナウイルス対策が争点という声もある。それは総力戦で取り組んでいくことであり、決して選挙の時だけの争点にしてはいけない」と訴え、報道陣に「基地問題は平和の問題として、さまざまな観点から争点にするべきだと思う」と述べた。基地問題を最大の争点に位置付けたいとの思いがにじむ。

 県内の感染状況が全国最悪レベルで推移し、玉城県政には厳しい視線が注がれた。衆院選の前哨戦と位置付けられた7月の那覇市議選で「オール沖縄」勢力は縮減。浮動層が比較的厚い同市で、「オール沖縄」の原点である辺野古反対の訴えはかすんだ形となった。

 ただ、衆院選を前に感染状況は落ち着いてきた。ある陣営幹部は「新型コロナ対策が主要争点になるのは間違いない。ただそれだけが問われてくる状況からは変わった」と分析する。

 別の幹部は前回選挙は現在野党第一党にある立民も辺野古反対を掲げていなかったと指摘。新基地反対の民意は根強いとし「政権交代すれば辺野古は止められるということを浸透していけば勝てる」と息巻く。

 別の関係者は、組織態勢は盤石でないと認めつつ「辺野古に加え、沖縄関係予算の減額など政府の沖縄政策に対する県民の不信感は強い。衆院選で審判を受けるのは政権評価だ」と強調した。
 (’21衆院選取材班)


 19日公示、31日投開票の衆院選に向け、県内政治は早くも決戦ムードに包まれている。衆院解散を前に潮目を読む。