【記者解説】「辺野古」鮮明な対立軸 基地や振興を問う 沖縄の衆院選


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国会議事堂(資料写真)

 今衆院選は、2022年に日本復帰50年の節目を迎える沖縄にとって、県の将来像を描くための先導役を選ぶ選挙となる。選挙後すぐに次年度予算編成や新たな沖縄振興計画策定に向けた法整備が控えており、実践力が問われる。立候補予定者は米軍普天間飛行場の移設に伴う名護市辺野古の新基地建設の対応で意見は分かれ、対立軸も鮮明だ。選挙戦は基地問題や振興策の方向性などを争点に、活発な議論が繰り広げられる見通しだ。

 沖縄振興を巡り、政府は新たな沖縄振興計画の「基本方向」を8月下旬に公表した。年末に税制調査会、次年度予算編成が控え、来年の通常国会には新たな沖縄振興に関する法案が提出される。県選出議員には、法案や関連税制の成立過程で、沖縄の実情や課題を見詰め、県や市町村の要望を政府、国会に届ける重要な責務がある。

 辺野古新基地建設について、「オール沖縄」勢力から立候補する4氏が反対、自民党公認の4氏は容認し、無所属の1氏は新たな負担軽減策を打ち出す。前回選からの4年1カ月の間に、辺野古埋め立ての賛否を問う県民投票で投票者の約7割の反対意見が示されたが、政府は基地建設を強行する。県は国が申請した軟弱地盤の改良に向けた設計変更を「不承認」とする検討を進めるなど、政府と県との間で攻防が続く。

 立候補予定者には新基地建設の是非とともに、普天間飛行場の早期の危険性除去に向けた具体的な解決策も問われる。国の暫定指針値を超える有機フッ素化合物(PFAS=ピーファス)が流出した問題など、基地から派生する諸問題、事件・事故の防止に向けた施策も有権者の関心を集めるとみられる。

 今衆院選は4日に発足した岸田内閣への信任とともに、9年間続いた「安倍・菅」政治に対して有権者の審判が下ることになる。選挙結果は玉城デニー知事への評価とも直結し、来年の県知事選に影響を与える可能性もある。

 解散から投開票まで16日と、超短期決戦の中、各立候補予定者には政策を分かりやすく有権者に伝える努力が求められる。

 (池田哲平)