老年精神科病院「うるま記念病院」で発生した新型コロナウイルスの大規模クラスターを受け、精神障がい者に対する人権侵害を懸念する県自立生活センター・イルカと県精神保健福祉会連合会(沖福連)は15日までに、「県障害者人権センター」を立ち上げた。精神科病院で人権が脅かされている患者や、その状況を知る職員などから相談、情報提供を受け付ける。また、衆院選立候補予定者に対し、公開質問状を送ることも明らかにした。
両団体は15日、オンラインの記者会見を開き、閉鎖的な空間により患者が感染しやすかったり、感染しても転院が困難だったりと、精神障がい者の命が脅かされる状況を「社会的トリアージ(選別)」だと訴えた。
精神科病院でのコロナ感染状況について、報道や各病院のホームページで調査している精神科訪問看護師の有我譲慶(ありがじょうけい)さんによると、精神科病院の患者の感染リスクは一般の3・5倍、死亡率は5・3倍という。有我さんはクラスターについて「患者は強いられた密室環境に長期間いる。精神科は特例で人員配置も少ない。隔離収容、医療人員の少なさという構造的な問題が背景にある」と指摘した。
また、政府の認知症施策推進総合戦略(新オレンジプラン)により、認知症患者の多くが精神科病院に入院していると指摘し、地域ケアと逆行するプランを再考する必要性も訴えた。
沖福連の山田圭吾会長は、精神科病院内で感染した患者の家族から、病院側から情報提供がほとんどないという相談があったことを明らかにし「普段から家族も面会室でしか会えず、病室の状況は分からない。情報ないことが大きな問題だ」と話した。
イルカの長位鈴子代表は「ちゃんとした事実が知りたい。障害者人権センターを立ち上げ、SOSを受け付けたい」と話し、情報提供を呼び掛けた。