「SNSで小さな居場所をいっぱい作っていた」 りゅうちぇる流自分の守り方


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 初の著書「こんな世の中で生きていくしかないなら」(朝日新聞出版)を発売した県出身のタレントりゅうちぇるさん。子育て、沖縄への思い、今後の活動などについてオンラインで聞いた。 (聞き手・田中芳)

「暗いな、きついな、しんどいなと思った人に何かしらヒントはある本になっている」と語るりゅうちぇるさん(喜瀨守昭撮影)

 ―高校生の頃、居場所に悩んだ時期があった。自分の居場所を見つけるには。

 「上京後に原宿で自分の好きなメークやファッションを共有できる友達に出会えた。何年かたって沖縄の地元の友達と久々に会った時も居心地の良さに改めて気づくことができたし、沖縄は自分が素に戻れる場所だと感じた。居場所はすぐに見つける必要もないし分かることでもない。一緒にいたいと思う人に、すーっとついていくのもいいと思うし、SNSでもいいと思う。僕もSNSで小さな居場所をいっぱい作っていた。この人といる時の自分が好きだなって思う人や場所が居場所なんじゃないかな」

 ―SNSを利用している時に気をつけていることは。

 「自分の意見を発信する時は人を絶対に傷つけない、人を抱き締めるという気持ちを意識している。例えば、テレビやニュースを見て(ある人の発言に)怒りの感情が起こった時『何に僕は怒っているんだろう』と自問自答しながら言葉にして、その次にその人の背景まで考えるようにしている。1日、2日寝かせて、何回も何回も見返してみる。『これは間違い、これは正しい』というのはなるべく避けて言葉をふわふわ(柔らかく)させる。イエス、ノーではなくて、相手にイエス、ノーを決めてもらって人に考えるきっかけを与えるというのも大切にしている。今までSNSのコメントに誹謗中傷(ひぼうちゅうしょう)が何度か来たことある。『何でこの人はこういう表現になってしまうんだろう』って考えた方が、相手のためにもなるし自分を守る道具にもなる」

 ―息子の子育てで悩んでいることは。

 「毎日毎日、違う悩みが来て、年齢ごとの壁にぶつかっている。子育てっていうけれど、親育てだなって思うくらい、自分が試されているじゃないけど、本当に子どものおかげで成長させてもらえている。一つ一つ、楽しめているのは(パートナーの)ぺこりんがいるおかげ。大変なことも幸せなことも共有できていないと、子育てって楽しめない。『子育て』イコール『親育て』イコール『夫婦の絆』みたいなものは忘れないように意識している」

 ―最後の章に沖縄に触れたのはなぜか。

 「僕は本当に沖縄が大好き。でもただただ沖縄に生まれて良かったって思うだけじゃなくて、『沖縄で生まれたことに感謝する』イコール『ルーツをしっかり知る』ということでもある。僕の祖父は米兵でいろんな悲しい歴史もあったけど、それで僕は生まれた。小さい時から米軍基地も隣にあって、基地で働いている友達もいる。東京に移り住んで慰霊の日のことが分からない人たちとの差を感じることもあった。子どもにも沖縄のことをいっぱい教えたい。自分のルーツや沖縄の文化を知っているからこそ地元を愛せると思っている。生まれ育った故郷とそれに対する思いは本の中に入れたかった」

 ―先日、所属事務所からの独立と会社の立ち上げを発表したが、今後はどのような展望を考えているか。

 「今はコロナで難しいが、落ち着いたら人にもっと会えるようなイベントをやりたい。先天的に人の相談を聞くとか寄り添うのが好きなので。講演会ではないけど人が前を向くきっかけになれるような場みたいなものを考えたい。沖縄にもたくさん貢献したいと思っている。いろんなことを考えているので楽しみにしていてほしい」


りゅうちぇるが考える本当の自己肯定感 東京で身につけた5つの武器とは
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