琉球王国を代表する書家・鄭嘉訓のすずりを寄贈 子孫の古波蔵さんが那覇市に


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すずりのパネルを城間幹子市長(右)に手渡す古波蔵久男さん=27日、那覇市役所

 琉球王国を代表する書家の一人、鄭嘉訓(ていかくん)(1767~1832年)の子孫、鄭姓古波蔵家22世の古波蔵久男さん(86)は27日、鄭嘉訓のすずりを那覇市に寄贈した。家宝として大切に保管していたが、市制100周年の節目に「多くの市民、県民に見てほしい」と寄贈した。那覇市歴史博物館によると、鄭嘉訓の書は多く残されているが、すずりは大変貴重だという。

 鄭嘉訓は久米村の士族。書の力が認められ、1816年から1年半、鹿児島で藩士に書を指導した。

寄贈された鄭嘉訓のすずり。側面などに風景がデザインされている

 すずりは縦約36センチ、横約21センチ、高さ約7センチで重さは約15キロ。側面に風景のデザインが施され、裏に「文山鄭熿(ぶんざんていこう)」という人の名で「あなた(すずり)の純粋さを手本とし自らの勉学を励ます。あなたの堅牢(けんろう)さを手本とし自らの確信を守り通す…」という意味の漢文が刻まれている。同博物館によると、鄭嘉訓が中国ですずりを見つけ、同姓の人物の銘文があるため購入したと考えられるという。古波蔵さんによると、戦時中はこのすずりなどを井戸に隠して守った。古波蔵さんは「大切なすずりだ。うまんちゅ(多くの人)に見てほしい」と話した。城間幹子市長は「家宝を寄贈していただきありがたい。多くの人に見ていただき、一層輝くと思う」と話した。すずりは29日から12月末まで那覇市歴史博物館で展示する予定。