子どもの現実に想いを馳せる 大城讓次島尻教育研究所長<未来へいっぽにほ>


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大城讓次(島尻教育研究所所長)

 私は、見出しのテーマで先生方に話をする時、「想い」の字義(ある対象に向かって心で考える)の説明と、子どもたちがさまざまな表情を見せている写真を活用し、私見という断りを添えて思いを伝えている。それは、まず一人一人の受け取り方はさまざまである、ということを念頭に置き、子どもと向き合うこと。また、彼らの表情や態度だけでは分からないこと(理解度など)について、彼らの背景(家庭生活、友人関係など)にも想いを馳(は)せ、接することが重要であること。つまり、教師は常にアンテナを張り巡らせ、子どもの現実に寄り添い、助言や激励により、子どもたちの笑顔や「もっと学びたい」などの意欲を引き出すことが求められる、ということである。教師を「大人」と言い換えることもできる。

 低学年の算数の授業でのこと。ある児童が答えを発することができずにいたが、教師は粘り強く発言を促した。児童に発表の機会を与え、褒めて自信をつけたいという教師の意図を感じる光景であった。しかしその児童は泣き出しそうに立ったまま、結局声を発することなく授業は進んだ。私は、児童の心境を想像し(発表が苦手、理解が不十分なまま指名され、緊張感が増したなど)、教師は他の児童が注目する中での発表にこだわらず、その子に合った方法で学習意欲を喚起する方法を講じた方が良かったのでは、と感じた。

 今学校では、学習指導要領の理念の実現を目指し、先生方の奮闘が続いている。私の周りには、子どもたちの現実に想いを馳(は)せ、たくさんの笑顔や学ぼうとする意欲を引き出している教師や関係者がたくさんいて、「さすがだなあ!」と感心することがある。そんな方々への敬意と感謝の気持ちを表し、エールを送りたい。