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立命館大などガーナの農業を宮古から支援 「無電源」での栽培を実証へ


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発育状況を把握するため根元にセンサーを設置したカカオの木=宮古島市の「パニパニファームキャステム」(立命館大学提供)

 【宮古島】ガーナなど貧困農業国でスマート農業を促進させ、農業支援につなげるための実証実験が14日、宮古島市の農場「パニパニファームキャステム」で始まった。植物の根に電極を設置し、導管を通る水分(木部樹液)に反応して発生する電気(樹液発電)を感知することで、生育状態を把握するシステムの構築と有用性を検証する。実験期間は2024年6月まで。

 実験を進める立命館大学やガーナを拠点に農業支援事業に取り組む商社のデガス(東京都)、半導体メーカーのエイブリック(東京都)、浅井農園(三重県)が13日、オンラインで共同会見し発表した。ガーナに「気候が近い」宮古島市でカカオやバニラを栽培して実験する。会見では、立命館大の道関隆国教授らが樹液発電で植物の状態を把握する「ワイヤレス植物モニタリングシステム」について解説した。

 根に刺した電極と樹液が反応して発生した電気を蓄え、一定の量がたまると太陽電池で稼働する受信機にワイヤレス送信する。その受信間隔などで植物や土壌の環境を把握する。無電源でも植物の状態を把握、確認できることから、無電源農地の多いガーナでの実用化を想定する。

 道関教授らは「電気や通信などのインフラが整っていない貧困農業国などでも持続可能な農場経営が可能になる」と意義を強調した。ガーナなどの貧困農業国に同システムを展開していくことで、SDGsの(1)貧困をなくそう(2)飢餓をゼロに(3)エネルギーをみんなにそしてクリーンに(4)人や国の不平等をなくそう―の四つの目標達成も目指すとした。

 通常は生産者が実際に確認する必要があった生育状況や土壌の環境なども、樹液発電システムを利用することで把握できることから「省人化にもつながる」として、担い手不足に悩む国内の農業現場でも活用できるとした。