子どもに限界をつくらない 車いすトラベラー・三代達也<未来へいっぽにほ>


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三代 達也(車いすトラベラー)

 「三代さん、大人なのに背が低いんだね」。沖縄の盲学校に通う小学4年生から言われた衝撃的な一言。そうか、確かに同じ目線から大人の声がしたら、背の低い大人だと思うはず。

 彼は片目だけ、ほんの少しの視力が残っている弱視の視覚障がい者。車が大好きらしく、僕の自家用車を触りながら質問を繰り返した。「このレバーは何のためにあるの」「車いすはどうやって車に積むの」。視覚障がい者は運転が難しいから、車に興味は持ちにくいのかなと思っていたが、勘違いだった。

 さらに彼は言った。「僕、車いすを押すのが好きなんだ」。見えにくいのに押せるのかと驚いたが、彼に任せて車いすをゆっくり押してもらった。

 僕は彼の目の前で、グイッと立ち上がって見せた。彼の視野に映るのは、僕の顔から、僕のおなかになった。「車いすに乗っている人でも、立てる人がいる。視覚障がい者でも見える人がいる。みんなそれぞれ違うから、決めつけて考えず、いろんな人がいると知ってほしいな」。自分自身にも言い聞かせた言葉だった。

 彼の言葉で、もう一つ印象に残った言葉がある。「もし三代さんに何かあったら、僕が支えるからね」。僕は、どこか彼を色眼鏡で見ていたのかもしれない。目が見えにくいなら大人が支えなきゃ、と。

 彼は対等だった。別れ際に「もうちょっと大人になったら、一緒に旅しような」と伝えた。彼は最高の笑顔で「うん!」とうなずき、僕を見送ってくれた。もし旅をしたら、彼は僕の車いすを押す手足となり、僕は彼の目になるだろう。

 子どもだから、障がいがあるからと限界を決めつけず、その子の言動や行動を信じて任せてみるのも、時には必要だなと感じた盲学校での出来事だった。