〈82〉心臓弁膜症 早めに専門医受診を


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 皆さんは弁膜症という病気をご存じでしょうか? 最近、テレビのコマーシャルで時々流れていますので耳にされた方も多いのではないでしょうか。ただ、どういう病気かとなると、皆さん「何だろう」となるのではないかと思います。そこで今回は弁膜症のお話をしましょう。

 まず、弁膜についてです。心臓には四つの部屋(右心房、右心室、左心房、左心室)があり、それぞれの部屋を血液が一方通行で右心房から右心室へ、次に肺から左心房、左心室へ、そこから全身に巡っていきます。したがって、それぞれの部屋の間に弁があり逆流を防ぐ役割を担っています。しかし、その弁膜が何らかの原因で逆流をしたり、開きにくくなって狭窄(きょうさく)することがあります。それが心臓弁膜症という病気です。

 その逆流や狭窄が軽度であれば全く問題ないのですが、その程度がひどくなるとその弁膜が関係する心臓の部屋に負担がかかってきます。多くの場合、病気の進行は緩やかですので心臓はある程度耐えられます。しかし、ある一線を越えると心臓がへばってしまい、本来の働きをすることができなくなります。それが心不全という状態です。

 心不全の状態になると、からぜきが増えたり、横になると息苦しくなったり、これまで何気なくできていた、例えば布団の上げ下ろしや坂道歩行などがきつくなったり、足がむくんだりします。

 そういった症状が出てきたら、かかりつけの先生に相談してできれば循環器内科または心臓血管外科を受診されることをお勧めします。初期の段階で治療を始めれば症状も軽くなることが多く、長期的には心不全で命を落とすことが避けられるかもしれません。

 ただ、多くの弁膜症は進行することが多く、専門医の判断で手術が必要になることもあります。最近ではカテーテルでの治療も可能になっています。ただし現在は高齢の大動脈弁狭窄症の方のみです。弁膜症と言われたら勇気を出して専門医を受診してみてください。

(古川浩二郎、琉大医学部付属病院 胸部心臓血管外科)