「花ブロック住宅」東京に咲いた 沖縄の光と風を再現 建築家の宮本さん夫婦


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沖縄の建築文化でもある花ブロックを使い、誕生した集合住宅=東京都品川区

 【東京】沖縄伝来の「花ブロック」を使用した集合住宅が、東京都品川区二葉に誕生した。県内では当たり前に用いられている花ブロックだが、東京で見掛けることはほぼなく、“レア”な存在だ。建物は2019年春から計画が始まり、今年9月末に完成した。住人と地域、自然とのつながりを保つことのできる建材として、今後、別の新規建築物への使用を模索していくという。

 298平方メートルの規模で鉄筋コンクリート造りの3階建て。6戸で構成されている集合住宅「フタバソウ」を設計したのは建築家の宮本雅士さんだ。16歳で単身渡英して建築を学び、英国を代表する建築設計事務所のホプキンスアーキテクツで、世界各国の多数のプロジェクトに参画した。英国を拠点に24年間、ドバイワールドトレードセンターや東京ミッドタウン日比谷など、著名な建築物を手掛けた異色の建築家だ。独立後は東京に拠点を構え、環境先進国であるヨーロッパで培った経験を日本でも生かしている。

 そんな宮本さんが「小路とつながる集合住宅」をコンセプトに、「その土地や住人にとって愛着が湧く居心地の良い空間とは何か」を追求。「フタバソウ」は鉄筋コンクリートで造ることが決まったため、長年構想していた沖縄の建築文化でもある花ブロックを使用することにした。

花ブロックを使った集合住宅を設計した宮本雅士さん(右)と宮本百合さん

 仕事上のパートナーでもある妻の百合さんは沖縄にルーツを持つ。父は南城市奥武島出身の言語学者、故中本正智氏だ。そろって帰省する際は、沖縄建築を巡った。そこで花ブロックに魅了され、県外使用の可能性を探っていた。

 建物で使用した花ブロックは、山内コンクリートブロック(西原町)が請け負い、型枠から製作したオリジナルだ。デザインは日本の伝統的な竹細工の編み柄をモチーフとし、文化の融合を図った。

 温かみのある表情を生み出す花ブロックを建物の階段室、各居室のテラスへ配置し、近隣とのつながりを保ち、採光と風通しもありながら、プライバシーも確保した。花ブロックを通した採光で、日中は建物内へ影絵のような彩りをつくり、日没後は建物自体が行灯(あんどん)のように小路を照らしている。

 宮本さんは「花ブロックはヒートアイランド現象や台風が直撃する東京の環境にも適し、優れた建材であると同時に人や自然とのつながりを保つことができる。沖縄伝来の素晴らしい建築文化だ」と話す。今後も花ブロックを使った建築を積極的に取り入れていく考えだ。

(斎藤学)


 

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