〈81〉先天性鼻涙管閉塞症 8~9割 自然に治る


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 今日は乳幼児の涙の話をさせて頂きます。

 生まれつき涙の出口が詰まってしまうために涙があふれる「先天性鼻涙管閉塞症」という病気があります。新生児の1~2割に生じると言われており、そんなに珍しい病気ではありません。涙は目頭にある「涙点」を通って「鼻涙管」を伝わり鼻まで流れていくのですが、先天性鼻涙管閉塞症では鼻への出口付近で詰まることが多く、自然に涙があふれたり目やにが出たりします。

 典型的には生まれてすぐか遅くとも生後3カ月以内に症状が目立つようになります。片側だけの場合もあれば、両側の場合もあり、いつもまつげがぬれて束になっている様子が見られます。結膜炎と違い、充血が少ないのが特徴です。目やにが多い場合には抗菌薬の点眼を使うことで一時的に症状は改善しますが、止めるとまた目やにが増えるということを繰り返します。

 何もしなくても1歳までに約8割~9割が自然に治り、さらに1年後には残りの半分が自然に治ると言われていますが、2歳以降も症状が残っている場合には自然に治る可能性はだいぶ低くなります。

 また、目頭マッサージによる治療を指導される場合もありますが、効果は定かでないため、やりすぎによる皮膚トラブルには注意をしてください。

 自然に治らない場合の治療には二つの方法があります。一つ目は、生後6カ月から1、2歳頃にかけて行うブジー法です。ブジー法とは細い金属の棒を用いて詰まった部分を広げる方法です。安全のためお子さんを抑制して行うので、抑え係と術者に慣れが必要です。

 また、間違った方向に穴が開いてしまうとやり直しが必要となるリスクがあります。二つ目は、体の成長を待って1歳半から2歳以降で全身麻酔をかけて行う方法です。この場合には全身麻酔のための入院が必要となりますが、涙道内視鏡という特殊な細いカメラで涙の通り道をじっくり観察しながら詰まりを確実に広げられるというメリットがあります。

 生後6カ月を過ぎたお子さんで症状に心当たりがある場合はぜひ一度、お近くの眼科で相談してみてください。

(大山泰司、那覇市立病院 眼科)