ハンセン病差別の解消を 「回復者の会」が玉城知事に協議会設置を要請


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「沖縄ハンセン病回復者の会」共同代表の平良仁雄さん(中央)、知念正勝さん(左)から要望書を受け取る玉城デニー知事=15日午後、県庁

 ハンセン病療養所を退所した回復者らでつくる「沖縄ハンセン病回復者の会」は15日、県庁に玉城デニー知事を訪ね、差別や偏見の解消や課題解決に向け、県や当事者らによる協議会を設置するよう要請した。会は2018年にも同様の要望書を提出したが、進展がなかったとして、改めて県に全面的解決の取り組みを求めた。県が今年発行した啓発パンフレットが県の責任や謝罪を踏まえた内容になっていない点も指摘し、その修正も要望した。

 対応した玉城知事は、会が示した22年1月末の回答期限までに「しっかり内容を考え、返答させていただく。最終的な解決をみるまで努力をしていきたい」と述べた。

 沖縄愛楽園(名護市)の退所者で、玉城知事に要望書を手渡した共同代表の平良仁雄さん(82)は「言葉だけでなく、腹の底にある温かみが県を変える大事なものだと思う」と取り組みを促した。

 会の提出資料によると19年4月1日現在、県内の退所者は445人、入所歴のない人は64人で、いずれも全国最多。名乗り出ない退所者も含めるとその数はさらに多くなるという。

 差別や偏見は今なお残る。共同代表で宮古退所者の会代表の知念正勝さん(87)は「この20年要請してきたが、一つとしてかなえられたことはない。隠れるように生活している人もおり、当たり前の生活を送れるようにお力をいただきたい」と訴えた。

 同席したハンセン病問題ネットワーク沖縄の森川恭剛琉球大教授は要請終了後の記者会見で、差別解消の政策が進まない一因として、国の予算補助を受け対策事業を担う公益財団法人県ゆうな協会(会長・玉城知事)を挙げた。

 同協会の19、20年度の実績報告書の内容がほぼ同じで「回復者が求めるニーズについて、県もゆうな協会も理解していないのではないか」と強調。当事者を交えた協議会設置の必要性を説いた。