東日本大震災で友2人亡くし…沖縄で防災士取得「体験を周囲に伝えたい」


この記事を書いた人 Avatar photo 琉球新報社
津波で大きな被害を受けた大川小学校(奥)を訪ねた岸本大二郎さん=10月28日、宮城県(提供)

 【読谷】2011年の東日本大震災で友人2人を亡くした岸本大二郎さん(36)=読谷村=が16日までに、日本防災士機構の防災士試験に合格した。10月下旬に被災地を訪ね、津波で家族を亡くした遺族の証言も聞いた。「南海トラフ地震が起きれば沖縄にも津波が来る。体験を周囲の人々に伝えていきたい」と話している。

 11年3月11日、大地震を知った岸本さんは宮城県南三陸町の友人に電話したがつながらなかった。その数年前、東京で開かれた青年団の集いで知り合った同世代の男性2人だ。酒を酌み交わし「毎年会おうね」と約束していた。

 約1カ月後、2人が亡くなったと聞いた。「明るい性格で初対面でもすぐに打ち解けた。防災対策庁舎の近くで避難誘導し、津波にのまれたらしい」。すぐに被災地に駆けつけることは難しく、うちひしがれた。

 今年8月、防災士の試験が沖縄で開かれることを知り、受験を決意。養成講座を受けて試験に臨んだ。

 10月下旬、被災地を訪ねた。宮城県石巻市立大川小学校で娘を亡くした父親からは、津波直後の写真を見せてもらった。「長男も津波にのまれたが水に押し上げられ、奇跡的に生き残った」と話していたという。

 岸本さんは「親が(1960年の)チリ地震の津波で橋が流されるのを見ている。しかし沖縄は防災士の数が全国最下位で危機意識が低い」と指摘する。今後は講演活動などに取り組みたい考えだ。「災害があれば役場が全てやってくれるのではなく、自治会や地域の役割が大きい。体験とともに、自分の問題と考えることの大切さを伝えたい」と話した。 (宮城隆尋)