「沖縄の人のたくましさ書きたい」山之口貘賞の長嶺さん、受賞に喜び


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詩集の「Aサインバー」を手にする山之口貘賞受賞者の長嶺幸子さん=那覇市泉崎の琉球新報社

 受賞の知らせを受け、電話口で思わず「本当ですか?」と聞き返し、驚きとともに喜びがこみ上げたという。第43回山之口貘賞に決まった長嶺幸子さん(71)=糸満市。受賞作「Aサインバー」は、自身初の詩集だ。「古里や両親のことを書いたこの詩集で貘賞をいただけたらいいな、との気持ちがあった。とてもうれしい」と声を弾ませる。

 文学を本格的に学び始めたのは56歳の頃。約40年勤務した銀行の退職を控え、4人の子どもたちも成長し子育ても一段落、自分の時間ができた時期だ。詩より先に小説や児童文学の創作に取り組んだ。

 「高校までは本が好きで国語の先生になりたいと思っていた」と長嶺さん。琉球新報カルチャーセンターで作家の長堂英吉さんの講座を受け、当時長堂さんが代表を務めていた「南涛(なんとう)文学会」にも参加した。64歳の時に「長山しおり」の筆名で書いた児童小説「美乃利(みのり)の季節」は2015年に琉球新報児童文学賞に選ばれた。

 詩を書き始めたのは、18年秋から1年間、大阪文学学校の通信教育部を受講したことがきっかけ。定期的なスクーリングにも参加した。同校講師で詩人・冨上芳秀さんとの出会いが縁で詩誌「詩遊」の同人にもなった。

 詩を学ぶ中で、沖縄を代表する詩人・山之口貘の全集を読み込み、衝撃を受けた。「一言ですべてを表してしまうような、すごさがあると思う。何げないことなども含め、短い詩の中にいろんなことが含まれている」と刺激を受けてきただけに、受賞は感慨深い。今後へ向けては「沖縄の島の美しさ、沖縄の人々が心の底に持つたくましさも書いていきたい」と意欲を見せた。