〈84〉離島医療と救急医療 消防団の協力不可欠


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 南大東診療所は医師1人、看護師1人で運営しています。通常診療以外にも365日24時間オンコール体制で急患対応をしています。南大東島は急患搬送をする際に自衛隊ヘリを要請しなければならず、要請から本島の病院に到着するまで約4時間はかかります。

 例えば脳梗塞は発症から4・5時間以内に初期治療を始めなければなりませんが、南大東島で発症した際には発症後すぐ診療所に来てもらえないと適切なタイミングで治療にたどりつくことができません。そのため、特に離島では発症をしないように予防をしていくことが大事となってきます。

 脳梗塞をはじめ重篤な病気は、高血圧、糖尿病、脂質異常症の生活習慣病が関わっているといわれています。重篤な疾患を発症しないように生活習慣病をコントロールすることがとても大切だということを覚えておいて下さい。

 また、天候不良の影響で自衛隊ヘリが来ることができず、診療所で急患を見続けなければならないときもあります。私が赴任してから一番印象に残った症例は心肺停止で来院した20代男性を蘇生することができたものの、天候不良で搬送することができないことがありました。気管挿管後も人工呼吸器がないため、一晩中、手でマスク換気をし続けました。

 翌日は天候が回復して無事に搬送でき、本島での治療がうまくいったため、後遺症もなく退院し、診療所にあいさつに来てくれました。離島では人材不足のため医師と看護師だけでは対応できないときに手伝いをしてくれる消防団がいます。消防団は医学を学んでいるわけではありませんが、代々の診療所医師が指導をしてきたことで救急隊に近い活躍をしてくれています。実際、この男性を救うことができたのも、消防団が協力してくれたおかげだと思っています。つい最近までは新型コロナワクチン接種で打ち手がいないと騒がれていました。現在のような有事の際には南大東の消防団のように、訓練を受け、できる人たちで助け合いながらこの国難を乗り越えていく発想も大切ではないのかと思います。

(菊池徹哉、南部医療センター・こども医療センター附属南大東診療所 総合診療科)