【識者の目】辺野古不承認、頓挫の可能性高まった(武田真一郎・成蹊大教授)


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 玉城デニー知事が国の設計変更申請を不承認とした。設計変更を承認するための要件は実は当初の承認の要件と同じで、その埋め立てが国土利用上適切かつ合理的でなければならず、環境保全および災害の防止にも十分配慮されたものでなければならない。

 ところが仲井真弘多元知事による埋め立て承認後、2019年の県民投票で反対票は投票総数の71.7%に達し、反対の民意が明確に示された。軟弱地盤の存在が明らかになり、工事を続けるためには約7万本の杭の打設と2兆4000億円の費用(県の試算)が必要とされ、それでも基地が完成する保証はないという。このような埋め立てや設計変更が国土利用上、適正かつ合理的であるはずがない。知事の不承認は公有水面埋立法に適合しており、違法とは到底言えないだろう。

武田真一郎(成蹊大教授)

 知事の不承認に対し、国は(1)沖縄防衛局による国土交通相に対する審査請求(2)国交相が知事に承認を命ずる是正の指示をすることが予想される。(1)については、国交相が不承認を取り消しても承認されたことにはならないので国は新設計による工事をすることはできない。むしろ(2)が重要だ。

 最終的に知事は是正の指示の取り消し訴訟を提起することになるが、設計変更の承認は玉城知事の裁量行為であるから、不承認に裁量権の逸脱乱用があると言えなければ裁判所は違法と判断できず、むしろ是正の指示が違法となる。

 不承認が違法とは到底言えないことは上記の通りだ。今度こそ新基地建設が頓挫する可能性が高く、今後の展開が注目される。

 国は当初の承認の際にこれほどの軟弱地盤の存在が分からなかったのだろうか。当初は秘匿して承認を受け、既成事実を作って設計変更を受ける方が有利だと考えていたとすれば、あまりに県民を愚弄(ぐろう)している。
 (行政法)