資料に誤り20項目、不十分な調査…国の設計変更、検討過程から問題だらけ <辺野古不承認の深層>3


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埋め立て工事が進む米軍キャンプ・シュワブ沿岸部と設計変更不承認を発表する玉城デニー知事、軟弱地盤の一部データが切り捨てられたことを示す資料のコラージュ

 名護市辺野古の新基地建設に向けて軟弱地盤の改良工事を追加する沖縄防衛局の設計変更は、検討過程から問題をはらんでいた。専門家のお墨付きを得るために有識者たちを集めた「技術検討会」を6回開催したが、検討に使ってきた資料に20項目の誤りがあったことが最後の回で判明した。

 ミスの他にも、防衛局が意図的に設計から一部のデータを排除したことが次々と明らかになった。報道や国会論戦でも指摘されたが、防衛局は最後までそのデータを反映させず、新たに調査することもなかった。

 軟弱地盤が最も深い、水面下約90メートルに達する地点の地質について、防衛局は直接調査せず、他の3地点のデータから推定している。県はこの点を指摘し、設計変更を認めない根拠の軸に据えた。軟弱地盤について必要な調査・検討がされておらず、埋め立ての条件を満たしていると判断できないという主張だ。

■推進ありき

 防衛局は2013年に、大浦湾に広がる深い軟弱地盤を踏まえず当初の埋め立て工事計画を立てて県に申請し、承認を得ると「推進ありき」(県幹部)で土砂投入に着手した。だが、実際は軟弱地盤を把握する機会が全くなかったわけではない。

 1997年に防衛局が大浦湾で実施した調査によると、現在の埋め立て予定地近くで軟弱な層が約90メートルに達していることが分かっていた。これを基に、当初計画を申請する前段階で具体的な地盤調査をすることもできたはずだ。

 玉城デニー知事は、設計変更の不承認を発表した25日の記者会見で、工事開始前に十分な調査をしなかった防衛局の対応を「見切り発車」と批判した。

 軟弱地盤の改良工事が必要になったことで、工期は当初計画から2倍に延び、米軍が使うまでに少なくとも12年を要する見立てとなる。総事業費も14年に示した3500億円から約2・7倍の9300億円に膨らんだ。

 県幹部は「本来は事業を始める前にきちんと説明するのが筋だ。軟弱地盤を踏まえた工期や工費なら、国民、県民の受け止め方も相当に変わっていたはずだ」と指摘した。

■長期化

 原点である普天間飛行場の早期返還は見通せず、飛行場周辺の危険性は急速に増大している。

 米海兵隊は中国との緊張の高まりから、基地周辺への配慮よりも訓練を優先する傾向を強めている。市街地の真ん中に飛行場を抱える宜野湾市の人口は20年6月に10万を突破し、基地を除いた人口密度は東京都などよりも高い。

 今月23日には普天間飛行場所属のMV22オスプレイが民家敷地に水筒を落下させた。完成までに12年以上かかる辺野古移設では、その分、普天間飛行場の危険性が続くことになる。

 玉城知事は不承認の発表会見で「一日も早い危険性除去とは、その基地を使わないことだ」と、普天間飛行場の運用停止を強調した。

 県は事業の長期化で政府が説明する埋め立て理由が成り立たなくなったことも不承認の理由に盛り込んだ。防衛局は速やかに対抗措置を取り、いずれ裁判に発展する可能性が高い。県は主張をまとめた資料を逐一ウェブサイトで閲覧できるようにし、新基地建設の問題点をつまびらかにしていく構えだ。

 (明真南斗)