【識者の目】地盤調査せず設計 通常では考えられず(鎌尾彰司・日本大准教授)


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 大浦湾の軟弱地盤について焦点となっているのは、埋め立て地の東側護岸の真下に当たるB27地点で海面下90メートルまで軟弱地盤が続くことが判明したことだ。しかし、最深部のB27地点では地盤調査や室内での強度・変形試験が実施されていない。

 地盤調査をせずに大規模な構造物を設計することは通常では考えられない。特にB27地点は東側護岸の真下で、護岸が破壊されることになると、埋め立て土砂が海に流出することにもつながりかねない。

 その軟弱地盤に関する調査や試験の代わりに、沖縄防衛局側は別地点のデータを用いて強度や変形特性を推定し、それで十分だと説明している。調査実施の必要性について、県からも再三、質問が投げかけられたにもかかわらず、防衛局側は推定で十分である旨の回答を繰り返すだけだったと聞いている。

 B27地点で地盤調査が実施された後の設計変更であれば、その変更内容に誰も異議を唱えるものはいないと思うが、調査せずに推定値での設計では皆を納得させることは難しいだろう。

 海面下90メートルまでの軟弱地盤に対し、7万本を超える砂などの杭(くい)を海面下70メートルまで打設する改良計画だ。それほどの大深度の地盤改良工事はわが国で実績がなく、その可能性が疑問視されている。

 実施できたとしても、杭が届かない20メートル分は未改良のまま残り、長期的に沈下が予想される。また、砂杭を圧入することで約10メートルもの海底地盤の盛り上がりが発生する。海底地盤内の環境面も心配されている。

 さまざまな懸念事項がある中で、県は防衛局の設計変更を不承認にすると決めた。一度立ち止まって、国と県との協議がされることを願う。

 (地盤工学)