【識者の目】辺野古不承認、国は不服審査制度乱用(本田滝夫・龍谷大教授)


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本田滝夫(龍谷大教授)

 今回の不承認について、国は、国交相への不服審査で乗り切ろうとしている。しかし、国交相が請求を認容しても、裁決は不承認を取り消すだけで、知事の承認には直ちにはつながらない。

 だから、サンゴ特別採捕許可留保のときと同様に、承認をせよという是正の指示を国交相に発出させた方が早い解決となる。そうしないのは、その許可留保に対する是正の指示を巡る訴訟で、軟弱地盤の評価について最高裁の判事が3対2に割れ、国の薄氷の勝利に終わったからだろう。軟弱地盤は、国にとってまさに「蟻(あり)の一穴」だ。

 ところで、県の不承認は、軟弱地盤の改良工事を巡り、沖縄防衛局にした延べ39項目452件の質問に対する回答を踏まえ、県が専門家の助言を求めつつ慎重に行った審査の結果であり、その専門技術的な判断過程には何ら不合理な点はない。不服審査では、審査庁は処分庁の裁量判断の当否まで審理ができるとされているが、今回の不承認については、県の判断に適正さを欠くところがない以上、国交相は不承認を取り消すことはできない。

 それにしても、国の不服審査の利用はやはり問題だ。沖縄防衛局は国の機関であって、迅速な救済を必要とする国民と同様な立場にあるはずがない。ましてや、国民が、知事の処分の不服審査を知事でなく、法令所管大臣にすることになっているのは、大臣が第三者の立場にあるからだ。

 大臣の第三者性は知事との関係においても確保されるべきだ。沖縄防衛局と同じく国の行政権に属し、職員を同局に出向させている国交相に第三者性があるはずもない。国の不服審査の利用は不服審査制度を形骸化するものであり、裁判所の審査を免れるためにそうするのであれば制度の乱用だ。

 (行政法学)
 (おわり)