〈85〉コロナ禍と外科医療 病院の実情合わせ対応


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 新型コロナウイルス(COVID―19)のパンデミックが医療・経済・社会にこれほどまでに大きな影響を及ぼすとは誰も予想もしていませんでした。コロナ禍で医療者がどのような感染対策をしているのか、外科医療での取り組みを紹介します。

 患者の病態や地域の感染動向、感染対策の状況、医療供給体制等々が各医療機関で異なるため、その対応には多少の違いがあります。

 コロナ禍での外科医療は「予定入院・予定手術の中で延期可能なものは延期する」を基本とし、手術の延期が難しいがん患者や急を要する患者には、各病院の実情に合わせて対応しています。

 がん患者を含む予定手術患者の場合は、ウイルスの潜伏期間を考慮しながら手術前にPCR検査を行い、陰性を確認した上で手術を行っています。

 急を要する手術の場合は、手術前にPCR検査を行いますが、結果のいかんを問わず全例感染扱いとし、感染対策を万全にした上で手術を行っています。これは、手術前にPCR陰性を確認したが、手術後に感染が確認されたという事例の報告や、ウイルスの潜伏期間を考慮して全例感染扱いとしています。

 手術予定患者が手術前に感染が判明した場合は、感染判明から6週間以内に手術を行った患者の死亡率が高いことから、可能であれば7週間以上開けて手術をするのが望ましいとされます。

 コロナ禍においても手術を要する患者に対し、適切な外科医療を提供する方策を日本外科学会も随時発出しています。「不急の手術はあっても不要な手術はない」と言うようにコロナ禍において外科患者に対し、各医療機関が大変厳しい対応に迫られています。そういう状況下で、手術の延期・中止に伴う負の影響が患者に及ばないようにしているのが現状です。

 入院手術を予定している患者、またはそのご家族の皆さんで、疾患や手術に関するお問い合わせやご意見がありましたら、かかりつけ医や近くの病院へご相談ください。 

(奥濱幸博、沖縄赤十字病院 外科)