HIV「日常で感染しない」のに…偏見が患者苦しめる 86%が就労と両立


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 沖縄県内でエイズ治療中核拠点病院となっている琉球大学病院のまとめによると、11月26日現在、同院に通うHIV患者260人のうち初診時に就労していた人は87%だった。治療を開始したあとも就労を続けている人は86%で、ほとんどの人が治療と就労を両立している。同院でHIV患者の医療・療育環境調整などを担当する、県感染症診療コーディネーターの新里尚美さんは「HIVは日常生活では感染しない。特別な配慮はいらないことを知ってもらいたい」と話した。

 年代別内訳は、40代が38%と最も多かった。50代が24%、30代が23%と続く。初診時は30代が39%と最も多く、40代が31%、20代が19%、50代が9%となっている。

 治療年数の内訳は、1~5年が39%、6~10年が24%、11~15年が16%と、10年以内が半数以上を占める。

 新里さんは「HIVやエイズと聞くといまだに『死の病』と思われることも多いが、患者の多くは働き盛りの年代で、現実に就労している人たちだ」と語り、医学の進歩で患者を取り巻く環境が変化していることを説明した。

 琉大病院では、HIV/エイズの基礎知識や感染対策などについて知ってもらうため、県内の医療機関や介護施設・事業所などを対象とした出前講座を無料で開いている。60~90分程度で、対面・オンラインのいずれでも対応可能。

 問い合わせは平日午前9時~午後5時、琉大病院第一内科医局内の新里さん(電話)098(895)1144。

記者の一言

「もし社内の身近なところにHIV感染者がいたらどう思いますか」。取材時に投げ掛けられた問いだ。「普通に接します」と答えたが、身近に感染者はいないのではなく、周囲に明かさず働いているのかもしれないと、想像を巡らせた。取材を通して、病気と偏見や差別への恐怖を抱えながら生きる当事者の姿を垣間見た。記者としてできることは何なのか、考え続けている。

(嶋岡すみれ)