【記者解説】県民に支持されるビールへ、業績回復が焦点 問われるオリオン新社長の手腕


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オリオンビールの新社長に就任し、記者会見で抱負を述べる村野一氏=1日午後、那覇市安里のホテルロイヤルオリオン(又吉康秀撮影)

 前任の早瀬京鋳氏の電撃的な退任から約5カ月、オリオンビールは経営トップにシック・ジャパン社長などを歴任した村野一氏を迎えた。ビール離れという業界全体の課題に加え、新型コロナウイルス禍による業績の落ち込みという逆風の中での船出となる。成長軌道へ乗せられるか、村野氏のリーダーシップが問われる。

 村野氏はヒット商品の開発とともに、「宝の山がある」と表現する海外市場での販売拡大を目標に掲げた。オリオンにとって海外市場は、コロナ禍でも唯一前年度を上回っている成長分野で、近隣諸国を中心に販売を拡大していく考えだ。

 ただ、当面は県内の業績回復が急務だ。国内外への販売を拡大する際に重要となるブランド力の源泉は、沖縄県内で愛用されてきたことで培った「県民のビール」としてのイメージだ。だが、足元はコロナ禍で大きな打撃を受けている。

 2021年3月期決算は純利益が前期比37.1%減と大きく落ち込んだ。本業のビール部門の県内向けは売上数量ベースで同18.3%減少。飲食店など業務用の割合が大きいという売り上げ構成から、他メーカーよりも痛手が大きかった。

 オリオンは県内シェアの現状を公表していないが、20年3月に発表した中期経営計画では19年度の44%から3年で55%を目指すとしていた。「コロナでシェアは上がっていない」(吹田龍平太副社長)とされ、来年4月スタート予定の新計画では、県内シェアの目標値が焦点となる。
 (沖田有吾)


<村野氏略歴>

 むらの・はじめ 1962年、東京都生まれ。横浜国立大を卒業後、85年に総合電機メーカー大手のソニーに入社した。旧ユーゴスラビアやドイツでの勤務を経て、94年にソニーハンガリーで社長に就任した。ソニーメキシコ社長などを歴任し、2012年リコーに移籍し、カメラ部門の営業・マーケティング・商品企画などを統括した。15年には出版社大手のデアゴスティーニ・ジャパンに社長として入社し、18年から21年11月までシック・ジャパン社長を務めた。これまで8カ国での滞在経験がある。